京都の洋食(その18)
~ご存知サンドイッチ秘話~
京都の話題からすっかり離れてしまった洋食の話が止まらないが、今回はサンドイッチである。
これはイギリスのサンドイッチ伯爵が「発明」したのだとばかり思っていたが、パンに具を挟んで食べるというのは古代ローマからあったそうだ。
サンドイッチさんがこれを好んで食べたのは事実のようだが、「博打をしながら片手で食べることが出来るように考案した」というのは単なる伝説らしい。
サンドイッチ伯爵説の根拠はピエール=ジャン・グロスレが1765年のロンドン滞在の印象をまとめた著作『ロンドン』 (1770)の中のゴシップだという。
それによるとサンドイッチ伯爵は
「公衆の賭博台で24時間を過ごし、終始ゲームに夢中になっていたので、二枚の焼いたパンにはさんだ少しの牛肉を食べる他に生きてはおられず、ゲームを続けながらこれを食べる」
のだそうである。どうやら伯爵が好んだのはトーストにローストビーフをはさんだもののようだな。
ただ、ここでいう「二枚の焼いたパンにはさんだ少しの牛肉を食べる他に生きてはおられず」の「食べる他に生きてはおられず」の部分はすこし引っ掛かる。フランス語の原文がどうなっているのか分からないので断定的なことは言えないが、これは「二枚の焼いたパンにはさんだ少しの牛肉を食べるだけで生きていた」ということではあるまいか。
何はともあれ、そうなるとローストビーフサンドが「元祖サンドイッチ」なのかな。
この記述に続いて
「この新しい食べものは、私のロンドン滞在中に大流行した。発明した大臣の名前で呼ばれた」
とあり、これがサンドイッチを発明したのはサンドイッチ伯爵という説の根拠になっている。
ジャン=グロレスは「新しい食べ物」と言っているから、その当時はサンドイッチというのはフランスでは知られていなかったことになる。
もっとも、フランス料理の伝統からすれば「パンに具を挟むだけ」というのは料理の内には入らなかったかもしれないけど。
それにしてもサンドイッチさんは大臣の要職にあったのですね。
そんな人が1日中博打をやっていていいのか?
当時のイギリスはそんなに平和だったのだな。
まあ、大臣がしょっちゅう食べてるというのでいつの間にかその人の名前で呼ばれるようになったのかも。
また、伯爵は海軍や政治や芸術に傾倒していたので、最初のサンドイッチは仕事机の上で食べられたのではないかと推測している人もいる由。
これもありそうだ。
サンドイッチさんは真面目に仕事もやっていたのだ。
この人がいつも食べていたから「サンドイッチ」と呼ばれるようになった、というのもアリだな。
誰かがこれを食べていると「何や、お前、サンドイッチか」とか言われたり、お昼に食べていたら「サンドイッチみたいやな」とか言われたりして、段々と食べ物の名前になっていったと。
しかしサンドイッチさんは、博打もやってたけど仕事もしてた。何せ大臣だったんですから。
たまに忙しいと博打か公務か、どちらを取るかの板挟み(サンドイッチ)になっていたかもしれない。
(来週に続く)
【言っておきたい古都がある・328】