化け猫だあ~(その2)
~やはり化け猫は怖いというのが常識であった~
さて、前回は化け猫でも正義の味方がいるという「いい話」だったのだが、今回は定石通り「怖い話」に移る。
『耳袋』によると、猫というのは年を取ると老婆を食い殺し、その老婆に成りすますのだそうである。さらに猫というのは人間に乗り移る事もあって、化け猫物の怪談なんかがそうなのだが、以下のようなエピソードがある。
ある御家人が家で居眠りをしていると、表から母親とイワシ売りの会話が聞こえてきた。お母さんが「全部買うから負けろ」と言っているのだな。
イワシ売りが渋っていると、突如として母の顔がネコに変わりイワシ売りに襲い掛かった。
ビックリした御家人は、「おのれ、母を食ったな!」と化け猫を斬り捨てた。
ところが妖怪を退治したかと思いきや、死んでいるのは何と母親であった。
イワシ売りも「確かに化け猫でした」と証言したものの、評定所では認めてもらえず、御家人は母殺しの罪で切腹になったと。
ネコって怖い。でも、この話には別の解釈も出来るのだ。
この御家人はかねて不仲だった母親を口論の末に激昂して殺してしまった。そこで化け猫の仕業にして誤魔化そうとしたのだが、誰も信じなかったと。
如何? 本格ミステリならこう来ると思うのだが。
さて、ネコというのは逆恨みもするようである。
『太平物語』によると、江戸時代の京都にあった日蓮宗のお寺にネコが3匹飼われていた。
甚平という人がこのお寺に和尚さんを訪ねていくと、和尚さんは留守なのに女の人の話し声がする。不審に思って本堂を覗いてみると、何と美女が3人寄って楽しそうに話をしているではないか。
甚平さん、「さては和尚、隠れて女を3人も囲っているな」と大憤慨。和尚さんが帰ってくると、意見をしてやろうと一緒に本堂へ入った。
すると先ほどの美女はどこにもおらず、かわりに3匹のネコが和尚さんにじゃれついてくる。
甚平さんから事の次第を聞いた和尚さんは3匹のネコに向かって、「お前らが変化していたのだな。けしからん。出て行け!」
と命じたので3匹のネコは甚平さんのほうを睨みつけると寺から出て行った。
数日後、甚平さんは急に体調を崩し、そのまま死んでしまったという。
さてさて、追い出された時点で猫たちは何も悪い事をしていない。和尚さんの留守中に人間に化けていただけなのだ。それとも甚平さんをからかうつもりだったのかな。
何にしても、これで殺されてしまったのではたまったものではない。しかし、こんな猫たちだから、やっぱり寺を追い出したのは正解だったのか。すると、和尚さんだけが得をしたような。。。
これもまた「坊主丸儲け」?
(来週に続く)
【言っておきたい古都がある・427】