四千年の知恵(その5)
~お天道様はお見通しだ!~
震畏四知(しんいしち)。
今日はマイナーな言葉になってしまった。
「震は四つのものが知っているということを畏(おそ)れた」という意味である。(後漢書)
その四つとは何か?
天知り、神知り、我知り、子知る。
日本ではちょっと間違って「天知る、地知る、我も知る」になっている。
後漢の楊震は順調に出世して遂に荊州刺史となった。
彼は東莱の太守に任命されたので、東莱郡へ向かう途中、昌邑を通った。
その時の昌邑令は王密。この男は、かつて楊震が荊州刺史だった時、目をかけて推挙した人間だった。
王密は大恩ある楊震が自分の任地に来ていると知り、挨拶に来た。そして深夜、懐からこっそりと金十斤を取り出して、楊震へ贈った。
すると、楊震は受け取るのを拒否した。
王密が「誰も見てませんから大丈夫ですよ」と言うと、楊震が
「天が知っている。神が知っている。私が知っているし、君も知っている。これ程知られていて誰も知らないと云えようか」
この楊震の態度を見た王密は恥じ入って退出した。
これが中国4千年の知恵である。
「誰も見てない」なんて有り得ない。天が見ている。神様も見ている。賄賂を受け取る自分と贈る君とが知っている。この四者が知っているのだぞ、ということ。だから賄賂なんて受け取らないのだ。
日本でも昔は言いましたね。
「お天道様はお見通しだ!」
最近はあまり言わないようだが。
ところで、本場中国でも最近は震畏四知とは言わないのかな。
中共(中華人民共和国)では平成20年(2008)から平成24年(2012)の5年間で、汚職事件で立件された公務員が21万8639人に及んだ。
平成25年(2013)~平成29年(2017)の5年間に汚職事件で立件した公務員は25万4419人で、直前の5年間と比べて16・4%増加したことを明らかにされた。立件された閣僚級以上の幹部は120人に上り、うち105人が起訴されている。
もう天は見てないのかな。
ひょっとしたら、最近ではあまり言わなくなったが、黄砂とPM2・5でかすんでしまって、見たくても見えないのかもしれない。
【言っておきたい古都がある・345】