舞台裏に迫る! 二つの綴織 MIHO悲母観音と蓮華弥勒
MIHO MUSEUM の夏季特別展「二つの綴織 MIHO悲母観音と蓮華弥勒」が本日7月19日に開幕する。一足先に前日の内覧会に赴き、その企画趣旨を肌で感じ、驚きと満足感を持ち帰らせていただいた。
MIHO 悲母観音像の”顔”に使われた絹糸の一部
緯糸の紙管に番号がついている。これが織下絵に記された数字と符合させ使用される。
微妙なグラデーションが様々な組み合わせにより生み出され、
光を織り込み繊細で微妙な表情をみせている。
二つの綴織の一つは、明治期の日本画の巨匠・狩野芳崖の最高傑作・「悲母観音図」を繊細な綴れ織で再現したもので、4500色の糸を駆使した「MIHO悲母観音像」。
片や、焼失した法隆寺金堂壁画・二号壁に描かれた「半跏思惟菩薩像」を基に制作されたもので、6000色の糸を使って再現された「蓮華弥勒像」。
そして、その綴織を制作した川嶋織物セルコンから、門外不出の「 MIHO悲母観音像の織下絵」が初公開されていた。
初公開の織下絵は、ご自身の目でご覧いただくほうがよい。絹織の織下絵の制作だけで1年2ヶ月を要したという。
織下絵は、原画を織でどう表現するかのディレクション図といえる。まず原画を左右逆転させて描かれている。
染織の各工程の楽屋裏を、いや台本を見るようなものだ。
織下絵の展示は3部構成のうちの第3部で登場するが、下絵は織下絵だけではない。
第1部のMIHO悲母観音像のルーツを辿る構成の中で、原図となった狩野芳崖の「悲母観音図」が描かれるまでの過程や、その解体までもするかのように、狩野芳崖のスケッチ図などが参考図版として公開され、分析の用を得んとしていた。
まるで狩野芳崖の解体新書を見るかのようである。
こうしてフェノロサや岡倉天心とともに、数々の仏画などに出合い悲母観音図が出来上がってきたようだ。そんなエネルギーに感染されながら、あらためて見つめる「MIHO悲母観音像」。
下図の精神に、更に慈しみの心が織り込まれたMIHO悲母観音像の前に、再度向かう。
当初描いた母子像に、人類誕生の息吹が吹き込まれていた悲母観音像。
綴れが放つ神々しい光に、呆然と立ちすくんでしまった。
既報/夏季特別展「二つの綴織 MIHO悲母観音と蓮華弥勒」/MIHO MUSEUM
■開催期間:2014年7月19日(土)~8月17日(日)
■開催会場:MIHO MUSEUM
滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
■開館時間:10:00~17:00(最終入館16:00)
■休館日 :毎月曜日
■入館料 :一般1100円 高大生800円 小中生300円
■お問合せ:MIHO MUSEUM 0748-82-3411
■URL :http://miho.jp/