最澄とハンフリー・ボガート
~最澄はボギーに先駆けていた~
さて今回は「比叡山はハリウッドよりも先進的だった」という話。
まずは伝教大師最澄の短歌。
世の中は一日の外なかりけり昨日は過ぎつ明日は知られず
大雑把にいってしまうと「自分が生きている世の中というのはこの一日だけである。昨日は過ぎてしまってもう無い。明日は来るかどうかも分からない」ということだろうか。
映画好きの人ならこの歌を読んで何か思い出しませんか。
言わずと知れた「カサブランカ」である。ハンフリー・ボガートの有名な台詞。
「昨夜はどうしてたの」
「そんな昔のことは忘れた」
「今夜はどう」
「そんな先のことは分からない」
大体こんなやり取りだったと思う。
洒落た受け答えとして有名だが、なんと千年以上も前に最澄が同じ趣旨の事を言っていたのだ。
アッパレ、最澄!
伝教大師さまはあのボギーに先駆けていたのですよ。ハリウッドは漢字で書けば「聖林」だが、名台詞の元ネタ(?)が聖地比叡山の開祖であったわけだから、やはり京都は奥が深い。
ちなみにこの映画の中で最も有名な台詞だとされている「君の瞳に乾杯」というのは実際には存在しない「名台詞」である。字幕を担当した清水俊二氏の思い切った意訳だったのだな。いや、意訳というより、もう創作ではないだろうか。かつての日本の映画人というのは凄かった。
余談だが、映画好きのモダンボーイであった私の曾祖父は「カサブランカ」のことを「カブサランカ」と言っていたそうである。せっかくこの映画の名台詞は日本に起源があると判明したのに、こういう間違いをやられては「古都の威信」に瑕がつくのではないかいな。
まあ今でも映画の原題をそのままカタカナにして公開しているのが沢山あるが。
しかし、最澄はボギーよりモダンボーイだったのか、それとも図らずして名作「カサブランカ」は仏教思想を取り入れたのか。
こういう発見があるので、古典を読むのは面白い。^_^
【言っておきたい古都がある・372】