嵐電駅名由来(その1)
~嵐電の駅には珍名が多い~
京都通の方には言うまでもないことでしょうが、嵐電(京福電鉄嵐山本線・北野線)には珍なる駅名が勢揃いである。。
①西院 ②蚕ノ社 ③太秦
④帷子の辻 ⑤有栖川 ⑥車折
⑦鹿王院 ⑧御室 ⑨常盤
地名と違い、これらは皆さん結構ちゃんと読めるのではないか。③と⑤はまず間違う人はいないだろう。残りはどんな間違いがあるか見ておこう。
【不正解】
①さいいん ②のみのやしろ ④きじのつじ
⑥くるまおれ ⑦しかおういん
⑧おしつ ⑨じょうばん
まあ「いかにも」な間違いといえよう。ただ、②の「蚕」と「蚤」の区別はつけて欲しいものですが。
【正解】
①さい ②かいこのやしろ ③うずまさ
④かたびらのつじ ⑤ありすがわ ⑥くるまざき
⑦ろくおういん ⑧おむろ ⑨ときわ
今ではこの珍しい駅名を廻る旅行者も増えているようで、嵐電と京都市の地下鉄が1日乗り放題になる乗車券が1000円で販売されている。数年前、私も個人的に楽しんだことがあり、仁和寺やら車折神社やらを見学して嵐山駅で足湯に浸かった。
で、で、何とその足湯で、その1年ほど前に私のツアーに参加してくださったお客さんとバッタリ再会してビックリ。足湯なので「裸の付き合い」というわれにはいかないけれど、こういうご縁もあるのである。
さらに修学旅行らしい女子中学生が靴下をはいたまま足湯に浸かって「キャーッ」と言ったのでまたビックリ。
それで、足湯に一緒に入っても「混浴」になるのか、などと考えていて時間を過ごした。
何はともあれ、嵐電の珍名駅について少し詳しく書いてみよう。
①西院 ②蚕ノ社 ③太秦
のっけから変ったのが出ますね。
①西院(さい)……阪急電車では「さいいん」になっているが、「さい」のほうが正しいと思う。昔この辺りは葛野郡西院村(かどのぐんさいむら)と言った。
別の説として平安京の道祖(さい)大路に由来するともいう。
②蚕ノ社(かいこのやしろ)……この蚕(かいこ)を蚤(のみ)と読み間違う「豪傑」もいる由。もちろん、「のみのやしろ」もあったら絶対に面白いと思うが、やはり蚕は蚕である。
この蚕ノ社というのは俗称で正しくは
木嶋坐天照御魂神社
と言うが、多分どなたも読めないのではないでしょうか。読み方は
「このしまにますあまてるみたまじんじゃ」
なのだが、蚕ノ社でいいでしょ? まあ「木嶋(このしま)さん」ぐらいでもいいのですが。
本殿右にある摂社の養蚕神社が養蚕・機織・染色の技術を持っていた秦氏とゆかりが深いところから「蚕ノ社」と言われるようになった由。
しかしここで有名なのは、あの三角の鳥居。明神鳥居を三角形に組み合わせたアレだが、この鳥居は京都御苑の中にある厳島神社の唐破風鳥居、北野天満宮の中にある伴氏社の鳥居と共に京都三鳥居と言われる。「三鳥居」だからウイスキーと関係があるのかと思っても、関係はない。
③太秦(うずまさ)……ここは映画村があるので有名。「うずまさ」というのも大抵の人が読めるはず。広隆寺があるのもここ。寺のすぐ前に駅がある。やはり秦氏ゆかりの土地なのだろう。
数年前、まだ修学旅行の案内もしていたとき、嵐電で仁和寺から太秦に移動した。広隆寺の少し前辺りから路面を走るが、その時に生徒たちが「あっ、街中を走っている!」と叫んで窓から外を食い入るようにして見ていた。
ああ、関東の子はもう路面電車というのを知らないのだなと、思わず感心(?)してしまった次第。
マジでお寺よりも歴史よりも、路面を走る電車が一番の思い出になったようだった。何せ電車を降りてから線路の写真を撮ってましたからね。
さて、とりあえずは三つだけ。続きは来週。
【言っておきたい古都がある・238】