昔の映画は面白い(その10・完結編)
~最後は雑談風の話で締めくくり~
2012年6月5日に第一回「あきれカエル? ひっくりカエル?」から数えて、8年。
本コラムは、いよいよ8月18日に連載400回目。記念に「百鬼夜行展」をご一緒しませんか?
プレゼントの詳細は
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特撮に関してだいぶ前に聞いたのだが、今では爆発とかの派手なシーンはパソコンを使って簡単に作れるそうである。大学生でも暴走機関車が駅の構内で爆破されたり、飛行機が滑走路を暴走して周りにあるものをなぎ倒しながらターミナルに突っ込むとか、いともたやすく出来る由。
ド素人の学生にでもできるのだな。
それで分った!
だから数年前に聖林(ハリウッド)は3Dに活路を見出した。苦肉の策であります。
普通の特撮では作る側がもう金を取りにくい。「こんなのPCですぐ作れるよね」なんて言われたらそれまで。そんなものではもう「巨費を投じました」なんて言えないと。
そうなると素人がパソコンで簡単には作れないもの、3Dの方向へ走った。走らざるを得なかった。
3Dで「いかにも金かけてます」というポーズが維持できたわけだ。うん。そうに違いない。^^
しかしまあ、これでスケールの大きいアクションとは「ド派手な破壊だ」という考え違いが正されれば良いのだが。
本当にスケールの大きいアクション(活劇)映画というのは、たとえば、アルフレッド・ヒッチコックの「北北西に進路を取れ」や「引き裂かれたカーテン」なのである。3Dなどで建物なんかを木端微塵に破壊するのはコケ脅しの映画で、そんなものを「スケールが大きい」とは言うべきではない。上辺の派手さではなく、内容の問題なのである。
特撮の話はさておき、映画やドラマで登場人物が殺される話。
前回に書いたが、ゴジラや田宮二郎が生き返った。というか、とても都合のいい理由で再登場した。かと思えば、昔の刑事ドラマではレギュラーを殉職させたりしていた。
珍しい例では死ぬはずの人が中々死ななかったとき。
NHKが大河で「新選組!」をやったとき、芹沢鴨が中々死なない。主役の近藤勇よりも「悪役」芹沢に人気が出てズルズルと生き延びてしまった。本当は3月末で殺されるはずが6月まで生き残ってしまったと。本来なら「新撰組前史」のはずの部分が全体の半分を占めるという「異常」なことになってしまったのである。
いよいよ芹沢暗殺が近付くと、全国から「殺さないでくれ」という助命の投書がたくさん来たらしい。しかし史実を曲げるわけには行かない。でも、それなら最初から芹沢役の俳優を近藤勇に起用しておけば良かったかも。
芹沢が長生きをしたおかげで後半のストーリーがかなり窮屈になったようで、一番割を食ったのは伊東甲子太郎ではないか。本来なら近藤勇の参謀役として入隊した甲子太郎が、どのように近藤との間に溝が深まって袂を別つ事になったかをじっくりと描けたはずが、芹沢の「長寿」のおかげで回数が減って、出てきたと思ったらすぐ分れて殺されてしまったと。こうなると役作りも糞もなかったのではないか? 暗殺よりこちらの方がお気の毒である。
テレビの世界ではドラマの本来のストーリーとは関係なく、たまに若い役者が少し人気が出たぐらいでスタッフに偉そうな態度を取ったら、筋書きが変わって交通事故か何かで死んでしまう、というのもあったとか。
聖林(ハリウッド)でも似たようなことはあるのかな。
もうお亡くなりになったが、大島渚監督の「御法度」は京都が舞台で新撰組の話だった。タイトルも新撰組の掟の事かと思わせておいて実は。。。というお話だったし。まあ、物語は司馬遼太郎の『新選組血風録』から取っているのだけど。
作中、新撰組はもう壬生から西本願寺に移っている。まのでお寺の中のシーンが多く出てくるけど、作中では西本願寺だが実際に撮影をしていたのは大覚寺とのこと。
まあ、よくある話だ。
二時間ドラマなどでも、話をしながら歩いている男女が八坂の塔の角を曲がった次の瞬間、渡月橋を渡っているとかがあった。恐るべき瞬間移動。そんなことが出来たらもうアリバイ・トリックとかはどうでも良くなってしまう。
こんなことは日本映画だけのことでない。
「八十日間世界一周」の中で日本の場面も出てくるが、物語の設定としては鎌倉に来ている。ちゃんと鎌倉の大仏様も映っていた。
ところが、登場人物がある神社の境内に入ると、なんとそこは京都の平安神宮。
設定は鎌倉だが、撮影は京都でやっていたのだな。その瞬間、「あ、平安神宮や」と言って、映画館(祇園会館)の中は爆笑であった。
しかし、われわれが分らないだけで、外国の映画の中でも同じことは起きているのだろうなとも思う。
さて、最後は何ともとりとめのない話になってしまったが、映画ネタはこれでお開きにしたい。
来週はどんな話にしようかしらん。^^
「昔の映画は面白い」(完)
【言っておきたい古都がある・396】