京都の洋食(その3)
~洋食の3大傑作、カツカレー~
まず、前回「大人様ランチ」を紹介したら、「それは東京にもある」というご指摘をいただいた。
そこで(手を抜いて)ネットでちょこっと調べてみたのだが、「有名な」とされる東京の大人様ランチは「大人でも注文できるお子様ランチ」というコンセプトのようである。良く言えば「童心に帰る」、悪く言えば「ロリコン的」となる。郷愁を誘うメニューかもしれない。
しかし、某有名店の写真を見たら旗が立っていた!
ところが、日の丸ではない。そのお店の名前を書いた旗なのである。
これでは画竜点睛を欠くではないか。詰めが甘いぞ、東京。
京都の大人様ランチはあくまでも大人のための料理であって、子供のための料理を大人に出すのではない。
そこでようやく3大洋食の2つ目はカツカレーである。
カツカレーは大正7年(1918)に浅草の洋食屋台「河金」が、豚肉のカツレツを乗せた丼飯にカレーソースを掛けて「河金丼」と称して出したものがルーツとされる。これも東京都(ひがしきょうと)が発祥なのだな。
近年ではこれを「勝つカレー」と引っ掛けて必勝祈願をするようだが、昔は小さなビーフステーキ(ビフテキというのは死語になったのだろうか?)とトンカツを一緒に盛り合わせて「敵に勝つ」という縁起かつぎをやっていた。
この洋食の王者的存在であるトンカツとカレーライスを合わせたというのがアイデアなのだな。いつの間にかトンカツの他にチキンカツやミンチカツやエビフライ、白身魚のフライを乗せたのも「カツカレー」の一種、あるいは亜種として認知されているようだ。
しかも、そもそもは丼にカツを乗せてカレーをかけていたという。
ということは、カツ丼とどちらが先なのだろうか、という疑問が湧く。
そこで調べてみると――
カツ丼のほうは大正10年(1921)に考案されたようである。早稲田大学の学生が作ったという説と、大阪で出来たという説がある。
カツカレーの方が先輩なのであった。
ちなみにカツ丼は和食の一種。そしてこれは西洋のトンカツと日本の丼飯に玉子とじをドッキングさせた和洋折衷の最高傑作である。
ちなみに、これに次ぐ和洋折衷の第2位は武満徹の作曲した「ノーヴェンバー・ステップス」だ。普通とは違う形で舞台上に配置されたオーケストラをバックに琵琶と尺八の独奏が競演する。
この2つは日本が世界に誇る和洋折衷の双璧、二大傑作なのである。
で、カツカレーなのだが、これを最終的に完成させるためになくてはならないものは何か。
それは何と言っても福神漬。
白いご飯と黄色いカレーに映えるあの赤色を見よ。もっとも、赤い福神漬けは「危険な」着色料を使っているというので、近年は茶色の福神漬けが多いようだが。
この、福神漬というワンポイントによってカツカレー(いや、カレー全部かもしれない)は美的にも完璧となる。洋食屋のカレーに福神漬けはなくてはならない存在である。
店によっては福神漬けを最初から添えてくるのではなく、テーブルの上に蓋付容器で置いてある所もある。それがラッキョウとペアになってたりもする。しかしやはり福神漬けははじめからカツカレーに添えられていてこそ美的にも完成するのである。
ところで何年も前、京都市役所の近くにあったグリルアローンで食べたカツカレーはビフカツを使っていた。
伝聞だが、以前はメニューに載せていなかった(いわゆる裏メニューだった)のが、食べた人がインターネットで色々書いたので普通にメニューに載せたとか。
「これは裏メニューだよ」とネットで紹介してしまったのでは裏メニューにならへんやろう。
「これは内緒だから誰にも言ってはいけないよ」と断ってから秘密の話をペラペラと喋るのと同じではないか。
ネットで公開しながら内緒の話をしていると本気で思っている人がそんなに多いのか。グリルアローンで食べたカツカレー
何はともあれ、このグリルアローンは特大サイズのオムライスの方が有名であった。
そこで来週はオムライスの話に移る。
【言っておきたい古都がある・313】