京都の洋食(その1)
京料理は薄味だけど京都のラーメンは濃い味だ、とはよく言われる。だから東京あたりで「京風ラーメン」と称して薄味のラーメンを出しているのは「大嘘」であると。そのとおり。まあ「大嘘」というのは気の毒だが「大間違い」と言うのは正確だろう。基本的に京都のラーメンは味が濃いのである。
同じく、京都は個人経営のパン屋さんの名店も多い。京都はパンの消費量が日本一なのだな。
似たような例で京都には洋食の名店が意外と多い。私の地元の伏見(寺田屋の近く)でも大進亭というのがあって、亡父も若い頃は月に1回は行っていたというし、私の曽祖父(ひいおじいさん)もモボだったので良く通ってランチやエビフライを食べていたらしい。
(注)モボ⇒モダンボーイのこと。
昔からある店としては南座の向かいの菊水も健在だし、新興勢力としては伏見のコートレットとか下鴨の浅井食堂などがある。
しかも京都は牛肉の消費量も全国トップクラスなのだ。
○パンとラーメンの名店が多い。
○パンと牛肉の消費量が全国トップ。
○洋食屋の名店も多い。
これらから京都人の実態が浮かび上がってくる。
つまり、京都の人は「おもてなし」とか言って観光客には高い京料理を食べさせておいて、自分たちは安くて美味しいパンとラーメンを食べ、たまに贅沢するときは牛肉なのである。
私の子供の頃から京都で「肉」と言えばそれは牛肉のことであった。東京では何の注釈も入れずに「肉」と言えば豚肉のことらしい。
なるほど、そう言われてみると、関西で「豚まん」と言っているのを関東では「肉まん」と言っている。えらい違いなのだ。
そこで、洋食というのはどこの国の料理かというと、フレンチでもない、イタリアンでもない。
日本料理であります。
そうなのです。日本料理には大きく二つに分けて和食と洋食がある。西洋料理から派生してわが国で発達したのが洋食で、国籍は日本なのだ。もう少し詳しく言うと、本籍はフランスとかイタリアでも、現住所は日本。それが洋食である。
では中華料理はどうなるのかと言うと、中華は中華なのだな。
やはり中華思想だけあって日本食に取り込まれるのを潔しとしなかったようだ。
外国のものを取り込んで創意工夫で自分のものにする日本人の技能が洋食の分野でどのように発揮されたかというと、少なくとも3つの傑作を生み出している。
お子様ランチ、カツカレー、オムライス。
昨今、プレートランチとかで、一枚のお皿におかずとご飯を盛りつけたのがあるけれど、私はあれはお子様ランチが大人になったのだと思っている。実は、私は個人的にはあれはあまり好みではなく、やはりご飯はご飯、おかずはおかず、と別々に盛ってもらいたい。同じように、お椀に盛ったら「ご飯」でお皿に盛ったら「ライス」と言うのも趣味ではない。私にとっては全部「ご飯」である。
それはそれとして、この3大傑作の話だが、詳しくは来週から。
(続く)
【言っておきたい古都がある・311】