町家の未来(後編)
~本物を残さなければならない~
さて、外見だけではなく、人が住む家という本来の町家の未来についてである。
私は平成23年の9月に「エコ京町家苦戦」と題してフェイスブックに下記の記事をアップした。
エコ京町家苦戦
京町家の伝統的な技法を生かしたエコ住宅の普及を目指す京都市の「平成の京町家」認定制度が昨年9月の事業開始後、今年4月には1戸につき10万円の補助金もつけたが、1年間の認定数は僅か3戸しかない。
「平成の京町家」の定義は「京町家の伝統的な知恵を造りに反映させ、現代の技術の取り入れてエアコン使用を減らせる住宅」である。京都市が事業者からの申請を審査した上で認定する。地場産の木材を使って林業振興につなげる狙いもある。
苦戦の理由は、
◎認定基準が分かりにくい。
◎建設費が高くなる。
◎省エネ効果がはっきりせず、建てるメリットが見えにくい。
などであるが、「補助金がたったの10万円か」というのは表面には出ていないようだ。
京都市は2019年度末までに5,200戸を建てるのが目標だが、クリアするためにはこれから毎年650戸のペースで建てる必要があるけれど、只今3戸である。
お~い、大丈夫かあ~?
平成の京町家普及センター
その後どうなったかと言うと、ついにモデルルームが完成した。
京都市も頑張ってるやんと思ってしまう。
「平成の京町家普及センター」(中々見事なお役所的ネーミングです)が開業して普及に努めている。
http://www.heisei-kyomachiya.com/
この普及センターは平成29年11月までやっている由。
ということは、上記の目標を達成するつもりのようであるな。
そこで、このセンターを使ってイベントも行われた。
たとえば申し込み不要のイベントとしては、
①市内産木材を使った小物作り体験
先着各70人。参加料300円。
②苔を使ったミニ盆栽作り
先着各10人。参加料700円。
などである。ただ、参加者が集まったかどうかは寡聞にして知らない。
この他にも、「京の食空間コーディネートセミナー」とか「旧暦おひな祭りイベント」などが行われたそうである。
そこで私はこのモデルハウス展示場に行って自分の目で平成の京町家を確かめてみた。
その結果。
モデルハウスは町家本来の町家ではないし、かといって近代住宅とも言いにくいし、という感じで素人の私には判断がつかない。
しかし、口の悪い人なら「町家もどき」と言うだろう。
ここが難しいところだ。
この木に竹を接いだような家を普通の住宅より何割増しかの金額で建てたがる人がどれだけいるだろうか。
ぱっと見て、この家に住んでみたいと思う人がどれだけいるだろうか。
京の町家を将来に残すのなら、思い切って「本物」を建てたらどうか。
私は何割り増しかで「町家もどき」を建てる人よりも、倍かかってもいいから「本物」を建てたいという人のほうが一定数いると思う。
これは決して不可能ではない。現に、京町家作事組という団体が存在する。
http://www.kyomachiya.net/sakuji/
町家を一件建てるには様々な専門家が必要になるが、今ならまだその専門家が揃うのではないか。
「伝統的な京町家」と言われているが、実は昭和に入ってから建てられたものが結構多い。平成に建てた町家があっても悪くない。
町家を守るというのは過去に建てられたものを将来に残していくだけではなく、今現在の時点で将来に残すことの出来る本物の町家を新築することによって守ればよいではないか。
「平成の京町家」とは、新建材を使いソーラーパネルまで備え付けた「町家もどき」ではなく、平成の世に本物の町家を復活させることである。
京都市にも木造の、本物の町家を建てることにこそ補助金を出してもらいたいものだ。
この決断をすれば市長も男を上げると思うのだが。。。
【言っておきたい古都がある・80】