訪日外国人は何を求めているか?
~アンケート調査の結果から何を目指すべきか~
JTB総合研究所が訪日外国人を対象に実施したアンケート調査の結果が公表された。
テーマは
「家族や友人に自慢したい日本の街や文化」
である。
その結果、日本で最も気に入った(最も行きたい)場所のベスト5は
「京都」(27.5%)「東京」(19.8%)
「大阪」(3.6%)「鎌倉」(2.4%)「高山」(1.8%)。
二桁の数字を出しているのは京都と東京だけである。
京都がダントツというわけでもないが、4分の1を超える人が京都を1位に挙げてくれているわけだから御の字である。
京都の強みはこの調査では日本に何度も来ている人も一度も来た事がない人も京都を1位に挙げるのが最も多いということ。
つまり、一度来た人はまた来たくなり、来た事のない人は一番に「行ってみてたい」と思う。これが京都なのである。
最も楽しかった活動は
「日本文化を体験する」24.9%、
「美しい景色を楽しむ」15.2%、
「神社やお寺を訪れる」12.9%、
「日本食を食べる」 11.7%。
「日本文化の体験」とは具体的にどのようなものかというと、家族や友人に自慢したい体験というのが
「花見」「祭り」「お正月」
この調査は今年の2月から3月にかけて行われた。時期的に「紅葉」というのが入ってもよいはずだが、外国人にとってもやはり日本は桜なのだろうか。
また、欧米で年末の休みといえば当然のこととしてクリスマス休暇である。それに対して日本はお正月休みであるというのが一種の「カルチャーショック」として印象に残るのだろう。
他に外国人の印象に残ったものは「和風の結婚式」と「豆まき」が登場している。
ハロウィーンやクリスマスをどんなに真似しても外国人には受けない。日本本来の風俗習慣を大切にしなければならないということである。
もっとも、中には「コミケ」と「コスプレ」というのもあるのだが、これは東京での体験だろう。
ちょっと意外だったのは「Depa-chika」。
分かりますか。「デパ地下」。
外国人にとってはこれが日本文化の体験になるのだそうである。
そんなに珍しくて楽しいか?
ひょっとして、試食しまくっているのではないかな。
ちょっと面白いのは大都市以外で行ったことを自慢したい地域で、順位は上から
「奈良」「高山」「北海道」「日光」「高野山」
いずれも美しい景観や歴史、食、温泉などが評価されているが、奈良では「鹿の餌付け体験」というのが人気のようだ。
侮りがたし、鹿せんべい。
珍しいとこでは、回答者わずか2人という少数意見だが、城崎温泉というのが入っている。
「古い趣のある町並み、温泉、美味しい食事」というのが評価されている。
どうでもいいことだが、城崎温泉というのは私の両親(すでに2人とも他界している)が新婚旅行で行った所である。縁のある所が出てきて何となく嬉しい。
さて、このような外国人の評価を見て、われわれは何を目指すべきなのであろうか。
最初にはっきりさせておかねばならないことがある。
「数字を追うのは止めよ」
ということ。
「来訪者何千万人」なんてのをクリアしたからと自慢するのはもう止めてもらいたい。
特定の行事に何百万人来たとしても、単なる人ごみを作っているだけである。
これから目指すべきはそれぞれの地域の特性を生かした質の向上である。
日本に来る外国人は「日本」を求めているのである。
街に出たとたんに英語が溢れ西洋風の町並みと洒落た洋風のお店で外国人の気が惹けると思っているのか。東京なんて、またオリンピックをやるからと洋風リニューアルを加速していないか? それで「おもてなし」になるか?
洋式化を推進すべきは公衆トイレだけである。(これは以前にもこのコラムに書いた)
「何百万人集まったから次は何千万人だ」などという数字を追いかけていく目標はもう古い。
家に上がるのに靴を脱ぐ。
これぞ外国人にとっては大カルチャーショックではないか。
われわれにとって当たり前のことでも、他の国の人にとってはびっくりするような体験になることは多い。
気取らず、自然体で、「当たり前」のことが一番のおもてなしになることもある。
国際観光都市だからこそホテルではなく旅館、というのもありだ。
地域の行事やお祭りを大切にしていくことが「おもてなし」になる。
声高にハッスルする必要はない。
時代の流れと(そこそこに)折り合いをつけながら、昔ながらの日本を残していけば良いのである。
※調査の結果の詳細はこちら。
http://www.tourism.jp/research/2014/03/japan-guide/
【言っておきたい古都がある・78】