京の五条の橋の上(前編)
〜役人にも遊び心がある〜
今回は五条通である。
みなさんもご存知の通り、五条、四条、三条には「有名」な「大橋」がある。
ところで、このうち五条と三条の大橋には擬宝珠(ぎぼし)があるけれど四条大橋にはない。
写真で見てもらえば分るように五条大橋と三条大橋は欄干に擬宝珠があるが四条大橋にはなく、写真で見ての通りかなり無愛想な欄干になっている。
その代わり、というわけでもないのだが、四条大橋の車道側の欄干には恐らくユリカモメと思しき鳥がデザインされている。このあたり、行政もちゃんと配慮しているのだ。
ちなみに木屋町通りの三条小橋にも擬宝珠がある。で、この擬宝珠なのだが、お上が掛けた橋にはついている。つまり、この橋は(今で言う)公共事業で掛けた橋だということ。
五条と三条の大橋は行政が税金で作った橋なので擬宝珠があるのだ。それに対して四条大橋は民間が掛けた橋なので擬宝珠はないのである。
ついでに七条の橋も見てもらおう。ちょっと凝ったデザインになっている。
面白いのは松原橋にも擬宝珠があること。何故か?これはわりと有名な話なのでご存知の方もおられるだろうが、平安時代の五条通りは今の通りではなく現在の松原通だったのである。本来は今の松原橋こそが五条の橋なのである。豊臣秀吉が政権を取ってから京都の町並みの改変があったが、そのあおりで五条通がひとつ南に移ってしまったのである。
どうもこれは橋の掛け替えがあって、橋の位置が変わった。ところが京都の人たちは位置が変わってもその橋の事を「五条大橋」と言い続けたため、いつの間にかそれに引っ張られて通りの名前までが「五条通」になったのだという。
別に秀吉は通りの名前を変えようと思っていたわけではないのだな。
こうなると、今の五条大橋に牛若丸と弁慶の像があるのは間違いということになる。正しくは現在の松原橋のところに建てなければならない。しかしまあ、今さらどうしようもないが。
ところでその(現代の)五条大橋であるが、なんと車道側の欄干にもちゃんと擬宝珠があるのだ。国土交通省は伝統に従っているな。
川に掛かるオーソドックスな橋だけではない。五条通を清水方向に歩いてみよう。歩道橋がある。そして、これぞ伝統の賜物。歩道橋にもちゃんと擬宝珠がついているのである。
管轄しているのは国交省か京都市か京都府かは知らないが、役人にも遊び心があるではないか。
だいたい役所のやることは批判するのが定番になっているが、こういう面白いことはちゃんと評価すべきだろう。それとも、「こんなの意味ない」と批判しますか?
私はそのような批判をする人こそ、気持ちにゆとりのない人だと思う。
【言っておきたい古都がある・51】