怪異のカエルはガマガエル(その1)
~カエルのお化けはガマガエル~
少し前にキツネとタヌキの話をしたので、その流れで動物シリーズ。
まずはガマガエル。ゲロゲロ。
ある夏の夕暮れ、龍安寺の庭の片隅にうごめく影があった。寺が留守なのを確かめた盗賊たちだったのである。
「よし、行け!」と盗賊たちは方丈に入り込んだ。と、すると何と!
座敷には全長3メートルはあろうかというガマガエルがいるではないか。
鏡のような目で射すくめられた盗賊たちは身動きが出来ず、その場に座り込んでしまった。
やがて人間の姿になったガマが刀を抜くと盗賊たちは命乞いをした。するとそのガマか人間か分らない何者かが金の香炉を盗賊に投げ与えて、「貧しき故にこのような事をするのであろう。それをやるから二度とこんな悪事はしないように。また今見たことを人に話してはならぬ」
とラッキーな事を言ってくれた。盗賊たちは大喜びで金の香炉は取らずに逃げ去ったと。
『玉箒木』という元禄時代の本にあるエピソードである。で、このガマガエルの正体なのだが、これが何と、細川勝元だという。
ホンマかいな?
応仁の乱の当事者の一人ではないか。
龍安寺の方丈で正体を現して昼寝をしているときに盗賊がやって来たらしい。さらに勝元さんはよく龍安寺の池で泳いでいたとか。今度、龍安寺に行ったら池も良く見て見ましょう。ガマがいるかもしれません。
しかし、細川勝元の正体がガマガエルだったとは!?
あるいは、ガマガエルが人間に化けて「細川勝元」を名乗ったのかもしれない。
で、怪獣としてのガマガエルといえばご存じ自来也(児雷也とも書く)なのだが、どうも平成生まれの人たちは「ご存じ」ではないかもしれない。昭和の有名人たち(たとえば月形半平太など)は平成年間に入って急速に知名度が低くなってしまった。
自来也はガマガエルに変身するわけだが、これは昔の「怪獣もの」である。ゴジラのシリーズと同じようなものだけど、まあ、比較するには変身ものなら仮面ライダーのほうがいいのかもしれない。
何はともあれ、変身ヒーロー物というのは江戸時代からあったわけだ。
しかし現代では変身したヒーローというのはカッコいい姿かたちをしているものだが、江戸時代はガマガエルである。ちと醜怪ではないかな。
このあたりの感覚が今と昔では違うのだろう。
(来週に続く)
【言っておきたい古都がある・416】