水に落ちた犬を叩くのは止めよ、という話・1
~表には出ていない事実があるのではないのか~
いつの間にやらこの「止めよ」というのがシリーズになってしまっている。
今回はますます京都から離れてしまうが、少しはかすっているので大目に見ていただきたい。
で、本日のネタは表題にもあるように「水に落ちた犬をたたいて喜ぶのは止めよ」というわけで、正確に言えば「安易に叩くのは止めよ」ということである。
報道された事実だけが全てではない。「こいつを叩く」と決めたら、その人に不利な事実だけが明らかにされるのである。明るみに出た個々の事実は全て正しく嘘偽りはない。しかし、自分たち叩く側に都合の悪い事実は隠しておく。
たとえば、仮に(あくまでも仮にだが)大きな地震が起きる前には必ず変わった形の雲が出ているので、それを地震予知に役立てねばならないという意見があるとしよう。
A市で地震が起きる前に上空でこのような雲が出ていました。
B市で地震が起きる5時間前にこのような雲が観測されています。
上の二つを読んで、どこがおかしいかおわかりでしょうか。
よーく見ていただきたい。A市の文には「時間」が抜けており、B市の文には「場所」が抜けているのである。
よくよく調べたら、A市の上空にその雲が出ていたのは地震が起きる10年前だった。
よくよく調べたら、B市で地震が起きる5時間前にその雲が出ていたのは遠く離れた外国であった。
最初の例文だけを読めば「不思議な雲」の話は正しいと思ってしまうが、隠された事実をはめ込んでみると、
A市で地震が起きる10年前に上空でこのような雲が出ていました。
B市で地震が起きる5時間前に外国でこのような雲が観測されています。
となり、こうなると大地震が起きる前に変わった雲が観測されるという事実に間違いはないものの、それだからこれを地震予知に役立てよという人はいなくなるだろう。
つまり、その程度の話なのである。
で、水に落ちた犬を叩いて喜んだ実例のひとつが、もう去年になるのか、レストランや料理屋が食材の虚偽表示をしていたという一件。
「騙された、騙された」と喧しかったが、皆さん「美味しい、美味しい」と言って食べたのではないのか。どんな立派な食材を使っても料理人の腕がダメなら味もダメである。美味しくて、値段がリーズナブルならそれで良いではないか。
あの一件で厳しく追求されるべきだったのは京都の某料理屋の釈明だけである。どんなことを言ったかというと、
「表示とは違う安い食材を使っていましたが、そのぶんマツタケを増やしましたので原価に変わりはありません」
ということで、お客様に迷惑はかけていないということなのだろう。
不思議である。その店は表示とは違う食材でお客さんをたぶらかしながら、こっそりとマツタケの量を増やしてサービスしていたのか。
それなら最初から「マツタケ増量」と書けよと言いたい。そのほうがお値打ち感あるぞ。
結局、お客さんのことを考えていない。
私はこの釈明を新聞で読んだとき、あまりの馬鹿馬鹿しさに「こんな店には一生行かない」と心に決めた。
とはいうものの、このような不祥事がなくても私が自分のお金でその店に行くようなことは元々なかっただろうから、ちょっと侘しいものを感じてしまうのだが。。。
さて、本題に入らなければならない。
今叩かれているのは、STAPとかいう難しい細胞を作ったのに論文がおかしいと言われている割烹着のお姉ちゃんと、耳が聞こえるのに聞こえない振りをしていたと言われている作曲家のオジサンである。
二件が同時に進行しているからお姉ちゃんの方はまだマシだが、もし耳の話題がなければ割烹着が引き裂かれるぐらいボロカスに言われていたかもしれない。
私はあえてこの二件に異を唱える。のだけれども、ここまで書いたら予定の字数が来てしまった。本論に入る前に終わってしまったら、私のほうが叩かれてしまいそうだが、本論のほうは、来週に続く。
【言っておきたい古都がある・73】