四千年の知恵(その29)
~自分に都合のいいことばかり聞いてはいけない~
『戦国策』巻8斉1
斉の宰相である雛忌(すうき)は美男だった。身長も高いイケメンだったので、鏡を見て自分でうっとりし、妻に尋ねた。
「私と徐公とでは、どちらが美しいか」
徐公というのは斉で一番の美男子である。
奥さんは答えた。
「徐公よりあなたのほうが上です」
それを聞いた雛忌は信じられずに、今度はお妾にさん同じ事を尋ねた。
するとお妾さんが答えて曰く。
「あなたのほうが上です」
これを聞いた雛忌はまだ信じられずに来客に同じ事を尋ねた。
すると来客も答えて、
「あなたのほうが上です」
その翌日、当人の徐公が尋ねてきた。
相手の顔をまじまじと眺めた雛忌は、
「どう考えても私の負けだ」
と思い、さらに鏡で自分の顔を見て「駄目だ、こりゃ」と納得した由。
その夜、寝床に入った雛忌は考えた。
「妻の答は私への贔屓目だろう。妾の答は私を恐れてのことだろう。来客の答は何か下心があるのだろう」
この体験から宰相の雛忌は斉の王に進言した。
「権力者は自分に都合の良い意見だけを聞いていたのではいけません。色々な意見に広く耳を傾けるべきであります」
中国4千年の知恵。ほれ込みすぎて贔屓の引き倒しをする奴や、たかろうと思ってチヤホヤする奴に囲まれて悦に入るような奴はアカンよと。
ん? 誰だろう?
(来週に続く)
【言っておきたい古都がある・369】