誘われて京の梅
自転車に乗ってちょっとそこまで梅を見に
戻ってきた寒風の中でも、雲の流れを見て、陽射しの伺える日には梅見に出かけている。
観桜に比べ観梅は日程に余裕をもって臨めるから良い。
梅の花は開花情報に接してから1ヶ月は咲いていてくれるからである。
とはいえ、満開見頃の1週間は気忙しいものではある。
その一週間が、今年は少し早く2月半ばに始まりだした。
お蔭で先週は東奔西走となり、おまけに、ある日は自転車で巡った。
寒風に当たるのを嫌っていたのだが、相方の誘いが執拗で根負けしてしまった。
相方の案内するその日のコースは三箇所で2時間余だという。兎にも角にも付いていくことになった。
烏丸六角にあるオフィスから六角通を西へ、西洞院通へペダルを踏み出した。
西洞院通を南に下り、四条通を越え更に南へ綾小路通を過ぎ、このときに気づいた。「飛梅」を見るつもりであることが。
さては、次の仏光寺通を右に曲がるかと思ったが、真っ直ぐ通り越し止まった。
そこには菅大臣神社(かんだいじんじんじゃ)の鳥居があった。
菅大臣神社は西に西洞院通の鳥居、南に高辻通の鳥居、北に仏光寺通の鳥居と、三方に石畳の敷かれた参道がある。
小生が菅大臣神社を訪れるときは仏光寺通側からばかりである。
仏光寺通を南北に挟んで、北が紅梅殿社跡、南が白梅殿社跡で、この辺り一帯は管家の邸宅地で「菅家廊下」と呼ばれた学問所のあったところである。
白梅殿社跡には菅大臣神社が建ち、参道の両脇は民家などが押し寄せ、石畳を残し月極の駐車場となり、所狭しと車がとまっている。菅家邸のあった往時の姿は伺うことはできない。
仏光寺の北側紅梅殿社跡は、北菅大臣神社として祠が保存され、その祠は錠前で閉ざされ、路地にある民家の風景の中にすっかり溶け込んでいる。
この仏光寺通の菅大臣神社を中心に、菅家邸宅地は南北二町、東西一町(約109m)あったといわれるが、今はその一角に過ぎない菅大臣神社境内を残すのみとなっている。
菅原道真公もこの地で学に勤しんでいたのであろうかと思いながら立つと感慨深い。
「東風吹かば にほひおこせよ 梅の花 主なしとて春なわすれそ」
大宰府に左遷される直前に、庭の梅に向かって詠まれたこの句は、まさにこの地にあった梅に詠いかけられたのである。飛梅伝説の原点となる地の梅は、本殿向かって鳥居の左隣にある。
いまだ、その蕾は固く、蕾の数が少ないのは残念である。
弥生三月に出直すことにした。
この後は「飛梅の霊」を祀る「飛梅天満宮」に向かうという
自転車は次を目ざす。
烏丸通を七条通まで下がり、七条通を東へ国立博物館まで。
飛梅天満宮に着く前に、名木といえる梅が満開しているのを見せてくれるという。
三十三間堂の東の朱の塀に沿って南へ下った。身代不動尊法住寺である。
紅、桃、白の三色が、南大門を背景に左の塀に沿うように見えてきた。
山門の右横の塀内から、枝垂れ梅の桃色がこぼれそうにふさふさと咲き、塀外の白梅がその枝を下支えるようにも、負けまいと伸び上がっているようにも見える。
旧御陵正門の左手に背高く真紅に咲き誇っている紅梅は、漆喰の白とのコントラストが鮮やかで、南大門の甍に重ならせてみても、その黒に負けずに輝いているように見える。流石に後白河法皇ゆかりの地の梅であると、勝手に能書きをつけてしまうほどである。
やっと、満開の梅と、その巧みな開花の妙を目にすることができた。盆梅展にみる梅の妙に匹敵するものである。
その後白河法皇が、道真公とその飛梅の霊を祭神として祀られ、建立された飛梅天満宮が今日の目的の地である。梅見を楽しむにあたり、梅の霊にお参りしておこうという訳であるようだ。
新日吉神宮(いまひえじんぐう)にある飛梅天満宮へ向かうには、東山通に面する智積院と妙法院に挟まれた坂を、豊国廟に向かって上る。通名、京女の坂である。
坂は自転車ではとても険しいので手押しで上ったが、既に上る前にはもう体は温まり、寒風など全く気にならず、反っていい心地の風に変わっていた。
飛梅天満宮の前には、献木された紅梅の若木が盛んに花を咲かせていた。
余談だか、京の飛梅は紅梅といわれ、大宰府に飛んだ梅の霊が咲かせたのは、なぜか白梅である。
先週の休日は、城南宮の神苑に出向き、枝垂れ梅を楽しませてもらった。
満開盛りの見頃で、桃色、白色の二色の枝垂れ梅は、乱れ咲きとでも呼べば良いのだろうか。
小高い丘にある梅林を仰ぐように見上げると、まるで紅白のシャワーを浴びているように感じ、実に心地よく、身動きだにしたくなかった。
いよいよ2月25日は、北野天満宮の「梅花祭」である。
この日は道真公の月命日にあたり、天神さんの縁日(天神市)もあり、梅苑と境内の合計二千本の観梅が楽しめる。三光門前西広場では豊臣秀吉公が境内で開いた北野大茶湯に因み、上七軒歌舞会協賛の野点茶会も催される。
梅花祭神事の神職は梅の枝を冠に挿すのかと思いきや、このときは、冠に菜の花をつけているのに注目されたい。「梅花祭」は約900年にも及ぶ祭礼である。
梅花祭には舞芸妓に誘われて、京の梅見を楽しまれてはいかがか。
菅大臣神社
http://kaiwai.city.kyoto.jp/search/view_sight.php?lang=ja&InforKindCode=1&ManageCode=1000036
飛梅伝説 菅原伝授手習鑑
http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/exp2/w/152.html
しだれ梅 城南宮
http://www.jonangu.com/huyukaraharu.htm
天満宮ニュース 梅花祭
http://www.kitanotenmangu.or.jp/news/05.html