平成25年10大ニュース
~極私的に1年の出来事を振り返って短歌を捧げる~
みなさん、ご無沙汰しました。
この連載を止めた訳ではないものの、パソコンが壊れるという想定外の大事件で事実上の休載を余儀なくされていたわけである。
おかげさまでパソコンは新しくなり(エライ出費や)もっと早く連載も再開できていたはずが、パソコンが変わると使い勝手も変わり、悪戦苦闘の連続であった……というか、今もその最中である。
本来ならば前編を掲載しただけで止まっている「豊臣秀吉アラカルト」の続きから再開すべきなのであるが、それは悪戦苦闘を脱してからということで、いささか見切り発車ながら連載だけは再開することにした次第。
しばらくは週1回というわけにはいかないかもしれないが、過去の記事と同様に愛読していただければ幸いである。
で、その復活第一弾は、10大ニュースと短歌による平成25年回顧である。
【第1位】天皇陛下傘寿
なんといっても私にとってはこれが最大のニュースである。理屈はいらない。
恐れながら、歌三首捧げてお慶び申し上げる。
すめらきの大御光を天地(あめつち)に輝かしませ民安かれと
敷島の万(よろず)の御代をことほぎて茨の道も踏みて進まん
紅の血潮捧し靖国の御霊(みたま)鎮めん今日の白雲
【第2位】中共が防空識別圏を設定
中共(中華人民共和国)が設定した防空識別圏がわが国のそれと重なり、問題となっている。
ただ、ちょっとだけ言っておきたいのは、中共が悪いのは識別圏を通るすべての飛行機をチェックすると通告したからである。識別圏の設定そのものが悪いわけではない。
日本がチェックするのはあくまでも日本の領空に向かって飛んでくる飛行機である。ところが中共は自国の識別圏を通過するすべての飛行機に飛行計画の提出を要求し、従わなければ防衛的緊急措置を取る(つまりスクランブルを掛けるし、強制着陸も撃墜もする)と言明したわけだ。
防衛的緊急措置が出来るのは領空に侵入した飛行機に対してのみである。中共は基本的には公海上である防空識別圏を強引に自らの領空と同じにしたわけだ。これは世界中の国が何百年にも亘って条約と国際慣習を積み上げて作った秩序をないがしろにするものである。
ところが、新聞を読んでいると、まるで中共が識別圏を設定したこと自体が悪いみたいに書いているのではないか。それは違うと思う。
単に防空識別圏を設置するだけなら中共の主権の範囲だし、それが部分的に日本のものと重なっても申し合わせで何とかなると思う。強引にも領空と同じ権利を広げようとするからいけない。ここのところはきちんとしなければ不公平だと思う。
そこで、一首捧げる。
庭先は誰のものとは言わねども道行く人は安らかるべき
【第3位】中共の無人探査機が月面着陸に成功
何はともあれお目出度い。これで月は中共の核心的利益になった。いずれは中共が地球と月の間に防空識別圏を設定するだろう。
この報道にも少し疑問がある。中共が軍事的な目的を持っていると非難するのだが、そんなものアメリカであろうがロシアであろうが同じである。中共の軍事目的だけをあげつらうのは不公平だ。
ところで、月面で活躍した機械は「玉兎」というらしい。
日本では古来より「月ではウサギが餅をついている」と言い習わされている。中共でもそうなのかな。
そこで、一首捧げる。
餅をつく月のウサギも驚いてギョッと目をむく玉兎の姿
【第4位】安部晋三総理の靖国神社参拝
こんなものがニュースになるのがおかしいのだが、仕方あるまい。
戦犯が祀られているからというのはおかしい。
昭和28年8月3日、アメリカによって戦犯とされた人たちの名誉を回復する決議が衆議院本会議で共産党も含めた全会派一致で可決され、もはや法律的に戦犯とされる人は存在しない。ただ、サンフランシスコ講和条約により極東軍事裁判の判決は受け入れなければならないので、歴史的事実として戦犯とされた人たちの名前は残さなければならないが、同じ講和条約第11条後半の規定により、連合軍各国の承認も得た上で正式に名誉回復が行われているのである。他国にとやかく言われる筋合いは無い。
そもそも東京裁判とも言われる一連の軍事法廷はアメリカによる法に名を借りた復讐行為ではないか。これは正さねばならない。
だいたい、「南京大虐殺」のような中共のプロパガンダには反論するくせに、「バターン死の行進」のようなアメリカのプロパガンダには下を向いたまま黙っているというのでは、腰が抜けているぞ。
しかしまあ、安倍総理も当たり前のことをやってくれたので(当たり前のことをしただけで誉めるというのもおかしいのだが)一首捧げる。
忘らばや倒れし人の面影を浮かぶ涙に靖国の宮
【第5位】学徒出陣碑事件
今度予定されているオリンピックのために国立競技場が建て直しのようだが、それに伴い競技場にある学徒出陣壮行碑を撤去するという動きがあった。
昭和18年10月21日、戦地に赴く学徒兵の壮行会がこの競技場で行われた。この日を皮切りに多くの学生が戦場に駆り出されたのである。
「学徒進軍歌」では「いざ行かん初陣の朝は晴れたり」と歌うわけだが、実際は雨だった由。なかなか上手くいくものではないな。このあたりに幸先の悪さを感じる。
その学徒兵の記憶を刻む壮行碑が撤去されそうになったが、どうやら新しい競技場の中に残るらしい。碑の立つ位置は変わるのかもしれないが、まずは一安心である。
そこで、一種捧げる。
高らかに響く足音初陣(ういじん)の猛き学徒は行きて帰らず
【第6位】中共の「濃霧」問題
近年、中共では頻繁に濃霧が発生し、人体に影響があると問題化している。え? 誰ですか、「大気汚染」なんて言ってるのは? 「濃霧」ですよ。
中共は今後5年間で7兆円を投じて対策を講じるらしい。
日本でも昔は同じような「濃霧」が発生していたので、協力できることが多いのではないかと思う。こういう分野で接点を持てるのなら将来が明るくもなりそうである。
そこで、一首捧げる。
昇竜の飛天の姿に霧深し翳る日輪かすむ高楼
【第7位】中共でウイグル族のテロ多発
これも中共に不公平な記事があった。
ウイグル族のテロなんて、毎年100件ぐらい起きているのである。それが倍ほどに増えたわけだが、ことさら治安が悪化しているみたいに書いたり、習近平氏の基盤が不安定とか言うのは、これも不公平だと思う。
もちろん、本来は東トルキスタン共和国のはずの地域が侵略されて中共の領土になっているのだから同情はするが、やはり公平さは必要だろう。
そこで、一首捧げる。
ますらおが無念の思い堪えつつ幾年耐えて玉と散りける
【第8位】機密保護法成立
まあ、これも入れておかねばなるまい。
これで物凄く人権が侵害されるようなことを言っているが、そんなもの一体何回目か。
破壊活動防止法のときも警察官職務執行法のときも同じこと(治安維持法の復活みたいなこと)が言われた。それでどれだけ抑圧されたか? 何も変わっていない。探せば同じような例はまだ見つかるぞ。
まあ心配するなら、安物のジャーナリストがろくな取材もしないで「機密保護法に阻まれた」と言ったり、陰謀論者が「これは機密保護法で隠されているか」とか言い出すことぐらいだろう。
「東京はスパイ天国」と言われて数十年。秘密と言われれば知りたくなるのが人情だが、国防に秘密が存在するのは当たり前。ただし、「秘密がある」ということだけは秘密にしてはいけません。
そこで、一首捧げる。
誰知るや襖の奥の秘め事を知るも知らぬも覗く楽しさ
【第9位】オリンピック決定
私はオリンピックも高校野球も見たことがないので(見ようという気にならないので)このニュースはどうでもよいのだが、ひとつだけ懸念がある。
やるのは6年後らしいが、当然、天皇陛下は86歳である。
大丈夫か?
御不例があったらどうする?
こういうことって、悪いタイミングが重なったりするものだが。
ちょっと心配。
でも、メダルを目指している人たちのために、一首捧げる。
はずむ胸あの日揚がった日の丸に今ひとたびの勲待たなむ
【第10位】ロシアに隕石落下
これも面白かった。日本に落ちていたら陰謀論者がはしゃいでいたかもしれない。
新年はこういう面白くてスケールの大きいニュースがたくさんあることを希望する。
そこで、一首捧げる。
遥かなる宇宙(そら)より来る珍客はキングギドラにあらざりしかや
【最後に新年を祝う歌一首】
さて、最後まで読んでいただいてありがとうございます。
最後の一首は読者の皆様への景気づけの短歌です。
初日の出御稜威(みいつ)輝く大空に天馬超え行く虹の架け橋
平成26年もよろしくお願いします。
【言っておきたい古都がある・68】