四千年の知恵(その17)
~気をつけよう。甘い言葉と広い河~
一衣帯水。
一筋の帯のように、細く長い川や海峡。転じて、両者の間に一筋の細い川ほどの狭い隔たりがあるだけで、きわめて近接しているたとえ。
中共(中華人民共和国)でビジネスをしていると時々初対面でトップクラスの人は「日中両国は一衣帯水の隣国であり2千年以上の両国国民の往来の歴史がある」と、のたまうのだそうである。
上記の解釈に従えば「両国の間にある海なんて小さい小さい。たいした隔たりではないので仲良くしましょう」ということになるのかな。
うっかりすると信じてしまいそうになるが、本来この「一衣帯水」というのはどんな状況で使われたのか。
古代中国の南北朝時代、南朝・陳の皇帝は酒色におぼれ、人民は疲弊していた。北朝の隋はこれに乗じて南征を決意するが、その前には揚子江が大きな障害となって横たわる。
陳皇帝は揚子江を天然の要害と見てこの河を渡って隋が攻めてくることはないと信じていた。
隋の文帝は陳との間にあるこの揚子江の流れをひとつの長い帯に譬えて「一衣帯水」と表現したのである。
要するに、陳の国力が強い時には「この河の隔たりがあるだけのお隣さん」と和平を述べ、陳の国力が低下すると「こんな河はものともしない」と攻め込んだ。
揚子江を押し渡った隋軍は陳を倒し南北は統一されたわけだ。
揚子江は大河で、決して渡りやすいものではない。しかし、やる時はやるのだ!
これが一衣帯水。
ということは、中共から「日中は一衣帯水」と言われたら気をつけなければならないのではないかな。
中国4千年の知恵。油断大敵。
ちなみに、国防をおろそかにして負けた陳の皇帝は井戸の中に隠れていたのを見つかって捕まりました。お気の毒さま。
(来週に続く)
【言っておきたい古都がある・357】