京都の洋食(その15)
~そのグラタンは実在するか~
「京都の洋食」というタイトルをつけながら、その中身はいつのまにやら「日本の洋食」になってしまった。しかし、委細かまわず続ける。
今回はグラタン。子供の頃は高級なイメージがあったが今の世間様ではそうでもないようである。冷凍食品でも売っている。
これまた子供の頃にはグラタンというのは例の船みたいなお皿で白いソースで包んだマカロニやらエビやらをオーブンで焼いたものだと思っていたのに、「オニオングラタンスープ」というのを初めて聞いたとき、「グラタンをどうやってスープにするのか?」と悩んでしまった。スープ、すなわち液体状にすればそれはもうグラタンではないのではないかと。
大人になってからようやく「オーブンなどで料理の表面を多少焦がすように調理する料理」が「グラタン」なのだと説明してもらったのだが、そうなるとローストチキンを表面が焦げるように焼き上げれば「チキングラタン」になるのかなど、ツッコミどころが色々と出てきてしまう。
まあ、この場合は「皿ごと焼いて、そのまま出す」のがグラタンだとすればローストチキンはパスできるのだが。
せっかく焼いても皿は食えない。
京都のお菓子屋さんの甘春堂にはお菓子で作った「食べられるお茶碗」があるが(実際にお茶を点てることもできます)、食べられるグラタン皿とは?
その正体は、イカの胴を縦に切って内側の湾曲部分にグラタンの具を入れて焼き上げる由。
なるほど、これなら「お皿」も食べることが出来る。
ただし、現実にこの料理があるのかどうかは不明。私は見たことがない。「幻のドジョウ鍋」と同じで空想料理かもしれない。
でも、本当にあればアイデアだとは思う。
で、オニオングラタンスープなのだが、「タマネギを炒めてコンソメを注ぎ、耐熱カップに入れてフランスパンを一切れ浮かべ、チーズなどをかけてオーブンで焼いたものである」という理屈は分ったのだが、「フランスでは庶民料理」だという。
結構手間がかかるから日本ではわりと値段の高い洋食屋さんのメニューではないかというイメージがあるけれど、「本場庶民の味」はわが国では高級になるのだ。
これは高い値段を払わされて「庶民が食べるもの」を食わされているのか、フランスの庶民が高級な物を食べているのか。それとも、日本の金持ちはせいせいフランスの庶民並みということなのか。迷宮に陥る。
何はともあれ、「本場おフランス」ではオニオングラタンスープは屋台でも提供されているそうである。
(来週に続く)
【言っておきたい古都がある・325】