京都の洋食(その9)
~エビフライ、頭は食べるか食べないか~
さて、あけましておめでとうございます、という言葉で新年第一回を始めるべきなのだが、すでに松の内も過ぎてしまった。
2週間に亘る休載でご心配をお掛けしたかもしれませんが、新年早々青天の霹靂ともいうべき救急での入院という大ハプニングで病院に居りました。こんなことを書くと余計にご心配かもしれませんが。。。
何はともあれ、とりあえず出てまいりまして、体力も回復いたしましたので連載を再開いたします。
昨年から続けている「京都の洋食」だが、今回はエビフライの話である。「京都の洋食」と言いながら、エビフライというのは京都特有ではない。どこかでこじつけねば。。。
前回はコロッケの事を書いたが、ひところ洋食屋さんではクリームコロッケとエビフライを一緒の皿で出すメニューが定番だったことがある由。
ところで何と、このエビフライというのも日本で考案された料理なのだそうである。これなんか西洋起源のように思うのだが。
実際は明治時代にカツレツと天ぷらから考案された料理で、明治28年(1895)の民友社編『家庭叢書第八巻 簡易料理』に伊勢エビや車エビの「フライ」が載っている。「簡易料理」だったのだな。
明治28年の食生活は現代とあまり変わらないのではないかと思える。
ただし、その当時は冷凍食品は無かっただろうし、添加物もほとんどなかったが。
さらに大正2年(1913)の村井弦斎『食道楽続編 夏の巻』に「海老のカツレツ」の作り方が紹介されている。
その頃は「エビフライ」と「エビカツレツ」の二つの呼び方があったのだろうか。
現在では、トンカツ、ビフカツ、チキンカツなどは「カツ」で、エビフライ、カキフライ、アジフライなどは「フライ」である。
今、ふと思ったのだが、ホタテフライ、イカフライというのもあるので、同じ調理法でも魚介類は「フライ」と言い、ミンチカツ、フィレ(ヒレ)カツもあるように肉類は「カツ」と言うのかな、と結論しても良いかもしれない。
ただし、魚介類でも串に刺して揚げますと「串カツ」になる。
一本の串が全てを変える。魔力だな。
さて、スーパーの冷凍食品でも売っているエビフライだが、「大衆的な調理法」になると1匹のエビを縦に二つに切って「2尾」にする。
食堂でエビフライが「3尾」なのは実は1匹半。真面目に2匹で出してくれる方が半匹分多いことになる。
見た目の数に騙されてはいけない。
エビフライの中には「有頭エビフライ」として、エビの頭をつけたままフライにしているのがあるが、あれ(頭)食べますか?
私はちゃんと揚げているのだから食べるものだと思っているのだが、「食べない」という人もいる。マナーとして食べても食べなくてもどちらでもいいらしい。
まあ、「身だけでは貧弱なので頭をつけているのだ」と言う人もいて、これもまた奥が深そうである。
(来週に続く)
【言っておきたい古都がある・319】