京都の洋食(その6)
~カレーライスからハヤシライスへ~
さて、前回は閉店した名店の話だったが、やはり現役のことも記さねばならない。
昨今、京都で増えているというイメージの強いのがカレー屋さん。そして「おや、増えているのでは?」というイメージのあるのがオムライス屋さん。京都の洋食シーンは進化しているのである。
そして(どこの店でもやってるだろうが)ランチ(昼ごはん)と言いながら夜でも注文できる。欧米人が聞いたらどう思うかな。
日本では1日中昼ごはんが食べられるす。最近「季節感がなくなっている」といわれるが、とっくの昔に昼夜感もなくなっていたのだ。
まあ、芸能界や水商売の人は夜にあっても「おはようございます」と挨拶するから、似たようなものかもしれない。
ところがしかし、前にも書いたと思うが、これらの「ランチ」というのは「定食」という意味である。英語ではない。英語から出た日本語である。そう。洋食というのが西洋料理から派生した日本料理の一種であるように、ランチという言葉も英語から転用された日本語なのである。ここを勘違いしないようにしなければならない。
何はともあれ、京都の洋食は値段の幅が広い。
つまり、1000円前後で食べられる店から最低でも2000円は出さなければならない店まで千差万別。セレブから庶民まで幅広い階層をターゲットに出来る。
こだわらなければ冷凍食品も使えるし。
まあ、和食だと高くて量が少ないというイメージがあるので、せめて量が多くあるイメージで売り出したのかもしれない。
ちなみに、誇り高き京都の洋食屋さんのオムライスはケチャップをかけないという。デミグラソースや自家製ソースをかけるか、あえて何もかけないか。
ケチャップをかけるのは大衆食堂なのだそうである。
ただ、大衆食堂でも東山三条の「食堂はやし」のオムライスは美味しいですけど。
別に京都に限った事ではないと思うけど、最初に書いたようにカレーライスもオムライスも「専門店」が出来て花盛りである。
カレーなんて大衆食堂でもホテルのレストランでも食べることが出来る。
かつては「カレーライス」と「ライスカレー」があっが、今「ライスカレー」と表記しているのはあるのかな。
この二つはどう違うのかというのも考察の対象になっていた。
実際は「カレーライス」というのはすでにご飯にカレーがかかっているもので、「ライスカレー」というのはご飯とカレーが別々になっているものだ、というのを私は子供の頃に聞いた。
ただ、これも逆の説があり、すでにかかっていればライスカレーで別々ならカレーライスだと。ネットではこちらが多数説というか、定説のように見える。あるいは、関東と関西で違った(逆になった)のかもしれない。
まあ真相は藪の中なのだが、あのアラジンの魔法のランプのようなポットに入ったカレーが出てくると何かこう妙に高級感を感じてしまったものである。
あれはそのままご飯の上にドドドーッと流すようにかけて良いのか、迷いましたね。
スプーンですくって、おかずのようにして食べなければならないのだろうか、とか。
ところで、カレーライスはライスカレーとも言うのにハヤシライスはライスハヤシとは言わない。こう考えると、やはりご飯にカレーがかかっているのがカレーライスで、別々なのがライスカレーではないかとも思える。
ただしハヤシライスのことを「ハイシライス」とは言う。
私は子供の頃、ハヤシライスというのはご飯の上にビーフシチューをかけたものだと思っていた。
それならばと、自分で料理をするようになってからクリームシチューをご飯にかけて食べたりもしていたのだが、今思えば、これは「焼かないドリア」みたいなものだな。
ある洋食屋(ちょっと高級)に入ったとき、メニューに「ハイシビーフ」というのがあった。
これはハヤシをシチューのようにして出すのかな? と思って、どんな物が出てくるのか楽しみに注文してみたのである。
すると「ハイシビーフとライスですね」と念を押され、素直に頷いて待つことしばし。
そして出てきたのは私のイメージにあるシチューでもハヤシでもないものであった。ご飯とは別に今で言うスキレットのようなものに薄切り肉と玉ねぎがぐつぐつ煮えて、生玉子がポーンと割り入れられている。
多分これはご飯の上にかけるのだろうなと思い、おもむろにかけて食べた次第。これがシチューとハヤシは全然違うのだと思い知らされた瞬間だったかもしれない。
今は昔、スーパーでビーフシチューの素とハヤシライスの素が別々に売っていたので、ああ、やっぱり違うのだなと妙に納得してしまった。
ひょっとしたら肉がサイコロ状ならシチューで、薄切りならハヤシなのかもしれない。
カレーライスに比べればマイナーな存在であるハヤシライスだが、私はこれは「ハッシドビーフライス」が訛ったのだと思っていた。
で、今回参考までにと思って(ちょっと手を抜いて)ネットで検索してみると、あるわあるわ、ハヤシライスの由来がいっぱい。もうどれが本当か分からない。一体全体ハヤシライスの本家本元がどれだけあるか、それは来週に続く。
【言っておきたい古都がある・316】