家尊人卑(その25)
連載300回。
ついにここまで来ました。今までご愛読ありがとうございます。
お付き合いくださった読者の皆さんと、好きなことを書かせててもらっている京都cfに感謝、感謝です。
今のシリーズ「家尊人卑」もシリーズ最長記録を更新中で、何とこのネタですでにもう半年近く引っ張っています。どこまで続くのでしょうか。
~「家」の概念はいつ頃から広まったのか?~
これの元ネタはフェイスブックにも書いたのですが、手を加えて世に問います。
それでは連載400回に向かって、今後ともよろしくお願いいたします。
そこで先週からの続き。
徳川家康が政権を取った時、自分の力で勝ち取ったのだから自分が一番偉いのだ、とは言わずに征夷大将軍になったから偉いのだという事になった。
「夷を征伐する」のですから徳川に逆らうものは「夷」なのだろうか。
家康というのは合理的な考え方をする人であった。
「力で勝ち取ったのだから正当なのだ」と言ってしまうと、別の誰かが力で徳川に対抗してきた時に文句は言えない。倒されてしまえば力で勝ち取った相手が正当になってしまう。これでは具合が悪い。
そこで、本当は力で勝ち取ったのだけれども、タテマエの上では「天皇陛下から将軍にしてもらったから」正当なのだという理屈をつけた。
これだと他の大名が力で対抗しようとしても、それに対して「けしからん」と言えるわけだ。
「天皇に任命された将軍に武力で対抗するのは正当ではない」わけだから、ここで「反逆罪」が成立する。
家康は皇室を敬っていたのではなく、幕府の権力の正当性を主張するための方便として利用した。
それをみんな何となく認めていた。
他の大名だった分っていたはずである。徳川は力で天下を取ったのだと。
にもかかわらず、誰もが「天皇から将軍に任命された」から正当な政権なのだと納得した。
実際は時代劇でも「頭が高い」と目の前に出されるのは「葵のご紋」なのだ。決して「菊」ではない。
正当性の根拠さえもらえれば後は用無し。天皇陛下は隅に追いやられていた。これが徳川時代だった。
しかし、考えてみれば明治維新も似た様なものだろう。
「尊皇攘夷」と言って幕府を倒したのに、政権を取ったとたんに「文明開化」と言ってお雇い外国人を500人も招聘したのだから。
ところで前にもで書いたたように、「家」が成立するためには名字がいるとすれば、「家」の起源は公家か武家になる。
しかし公家は「藤原氏」とは言っても「藤原家」とは言わなかったので、ここではとりあえず「家」の起源を武家ということにしておこう。
翻って、名字を持たなかった江戸時代の庶民が武家のような「家」感覚を持つようになったのは何がきっかけか。
どうも仏教が絡んでいるように思われる。
江戸時代は寺請制度というのがあって誰でもどこかのお寺の檀家にならなければいけなかった。
名字がなくて「家」とは無縁のはずの庶民も、自分たちの「菩提寺」を持つことによって「家」の感覚が育まれてきた。個人の宗教を訊かれても中々答えられない我々日本人でも「家の宗教」を訊かれればちゃんと答えられるのはこのあたりから始まったのではないか。
お稽古事の世界でも組織化されれば「家」になる。お茶でもお花でも仲間の組織化と熟練度を示す階級で一番偉いのは「家元」なので。何といっても「家」の「元」だからこれほど偉いのは無いとすぐ分る。
武士の「家」は家禄はあってもそれだけで余分な利益は生み出さないが、お稽古事の「家」は向上心の刺激と自己実現の満足を与える事によってお金が動く。だから、これは珍しい「制度設計された家の制度」の実例ということになるのだろうか。
でも、やはりお稽古事の場合は目に見えない「家」の存在を取り入れた「家元制」という全く別の制度だろう。「統領」でも「肝煎り」でも「長」でもなく「家」というのがミソ。
ところで、「家」というのは本来は「いへ」で(旧仮名遣い)この「へ」というのは「へっつい」つまり「竈(かまど)」なのだそうである。つまり「家」とは「かまどを中心に置いた住居」のことだとか。
こう言われれば「左様ですか」と答えるしかないような。。。
しかし家尊人卑の「家」というのは「家族」ではないのです。もっと大きな「何か」なのである。
(来週に続く)
【言っておきたい古都がある・300】
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ただし、親睦会費用は参加者負担。