松尾芭蕉とお酒(完結編)
~芭蕉の酒賛歌。お酒は楽しく飲みましょう~
松尾芭蕉とお酒の話は今回が完結編である。フィニッシュです。着地を決めます。
生涯旅をしたという芭蕉だが、駕籠を利用するときもあれば、新酒の季節に酒処を通る事もあったようだ。
「駕篭かきも新酒の里を過ぎかねて」
芭蕉を乗せた駕籠の駕篭かきが「ここは新酒が出来たばかりだ」と、通り過ぎるのが惜しいと思ったという句だが、本当にそのまま通り過ぎるのが心残りだったのは芭蕉先生ではないのかな。
せっかくの新酒の里を素通りしなければならない。それは先を急ぐからか、それともお金がなかったからか。
「英雄色を好み、芸術家酒を好む」
こんな言葉があるのかどうかは知らないが、酒を愛した(と私は思う)芭蕉がたどり着いた酒仙の境地は次の一句であろう。
「椹(くわのみ)や花なき蝶の世捨て酒」
季節はずれで何の花もない野を飛ぶ蝶の姿を、世間から遠ざかって一人酒を飲む自分の姿にたとえている。芭蕉によって酒が芸術に昇華された一句である、というのが世に言う優等生的な結論なのだろう。
しかし私は違うことを言う。
芭蕉と酒の本当の境地は次に掲げる一句なのである。
「川舟やよい茶よい酒よい月夜」
川舟に乗ってよいお茶とお酒を飲みながら美しい月夜を見ている。これ以上の贅沢があるだろうか。芭蕉先生の場合、この川舟のお金も裕福な弟子たちが出してくれるのだろう。
そろそろ締めくくりに入ろう。
今回は趣向を変えて最後に私(谷口年史)の俳句をご披露する。
なにぶん素人である。拙いところは大目に見ていただければ幸いである。
もちろんテーマはお酒。最後は季語を先取りしてしまっているが、まあご愛嬌で。^^
名月の色に惹かれてはしご酒
盃に月を映して天を呑む
終電を逃して歩く月明かり
独り酒ふところ寂し根深汁
忘年会酒に呑まれて千鳥足
結論。お酒は楽しく飲みましょう。
松尾芭蕉とお酒(完)
【言っておきたい古都がある・262】