秘録・浦島太郎と乙姫様(前編)
~絵本では描けない浦島と乙姫の真実~
先週は実在の人物である小野小町と僧正遍照のセックスの話であったが、今回は御伽噺の主人公である浦島太郎と乙姫様のセックスの話である。
「浦島伝説」というのは「羽衣伝説」と同じく日本中にあるが、ここでは古典として一番ポピュラーな『御伽草子』を典拠にする。
作品の冒頭、「昔丹後の国に浦島といふもの侍りしに」とあり、舞台は京都府の丹後地方になっている。浦島太郎は年齢24~25歳。「あけくれ海のうろくずを取りて」両親を養っていた。
ある日、ゑじまが磯という所で亀を釣り上げたものの、「鶴は千年、亀は万年」と言うぐらい縁起の良い生き物なので助けてやると、捕らえた亀を放してやった。
え? え? え? 浦島太郎は子供がいじめていた亀を助けてやったんじゃないの?
違うんですね。自分で捕まえて自分で逃がしてやるのです。でもそれなら最初から捕まえなければ良いのではないかとも思うのだが、まあ、釣れてしまったのだから仕方ない。
ただし太郎は亀を放す時に
「常にはこの恩を思ひだすべし」
と言っている。つまり「助けたるさかいに、この恩を忘れるなよ」と念を押しているのだ。このあたりに下心を感じる。
何はともあれ、亀を「助けて」やった次の日、太郎が釣りをするために海辺に出ると、沖の方に小さな船が浮かんでいる。その船がだんだん太郎のほうに近づいて来るのだが、何と中には美女が1人乗っているではないか。
え? え? え? 昨日助けた亀が現れて竜宮城に連れて行ってくれるんじゃないの? 子供の時に「むかしむかし浦島は、助けた亀に連れられて」と唄ったじゃないか。
違うんですね。この美女が浦島に
「船が難破し、自分1人が小船でさまよっていた」ので「国へつれて帰ってもらえませんか」
と頼むのである。
頼みを引き受けた太郎は美女の小船に乗り込み、沖へと漕ぎ出し、10日ほどで美女の故郷に着きました。
え? え? え? 竜宮城は海の中にあるんじゃないの?
違うんですね。だいたい、竜宮上が海の中にあれば太郎は人間ですから到着する前に溺れて死んでしまいます。
竜宮城は陸上にある。
故に『御伽草子』の「浦島太郎」には「タイやヒラメの舞い踊り」は出てこない。そりゃ、陸上では魚は躍れない。
何はともあれ、亀の背中に乗せてもらったのではなく、自分で一所懸命に舟を漕いで美女と一緒に竜宮城までやって来た浦島太郎にどのような運命が待ち受けていたか?
美女と一緒に船に乗って竜宮城へやって来た浦島太郎だが、着いてみるとそこには「白銀の築地をつきて、黄金の甍をならべ、門をたて」た御殿があった。そして美女は太郎に対して
「わらはと夫婦の契りをもなしたまひて、おなじ所に明し暮し候はむや」
と、いきなりプロポーズするのである。
太郎のほうも
「兎も角も仰せに従ふべし」
と、軽いタッチで受け入れる。
その後は「天にあらば比翼の鳥、地にあらば連理の枝とならむと、互いに鴛鴦のちぎり浅からずして」暮らしていたと。かなり大層な表現ですが、要するに、やること(セックス)をちゃんとやっていたということ。
こうして3年の月日がたち、太郎は乙姫様に「故郷に残してきた両親の様子を見て来たいので」30日の暇が欲しいと願います。ここで乙姫様は泣きながら
「今別れなば又いつの世ににか逢ひまゐらせ候はむや」
と言う。つまり、この男はもう帰ってこないだろうと見抜いているわけだ。美女と一緒の贅沢な暮らしも、3年も続くと飽きてくるのでしょうかねえ。
ここで乙姫様の歌。
日数へてかさねし夜半の旅衣、たち別れつついつかきて見む
夜中に旅衣を二人で重ねたというのはセックスしていたということである。今は別れてもまた会いたいという意思表示でしょうか。
これに対する浦島太郎の返歌。
かりそめに契りし人のおもかげを忘れもやらぬ身をいかがせむ
「かりそめに」だから、乙姫様は本気だったのに浦島太郎は最初から遊びのつもりだったのか。 そりゃ、本当に両親のことが気がかりなら、3年も待たなくても、船で竜宮城につくまでに10日かかっているわけだから、それだけで十分両親が気がかりにならなければおかしい。忘れることが出来ないなんて言われても、中々信用できるものではない。まあ、後から思い返して「あれはいい女だったなあ」というのはアリだけど。何といっても「かりそめ」とはっきり言い切っているのだから。飽きたら終り。
ところで別れ際、乙姫様は衝撃の告白をする。
「今は何をか包みさふらふべき、みづからはこの竜宮城の亀にて候」!!!
乙姫様こそが太郎が放してやったあの亀だった!
浦島太郎は亀と夫婦になってセックスしていたのか!?
さあ、どうなる? 浦島太郎!
(来週に続く)
【言っておきたい古都がある・215】