おもてなしの極意
~高級な京料理を出すのが「おもてなし」ではない~
みなさん、あけましておめでとうございます。
本稿がアップされるのは1月6日のはずですが、まあ、まだ松の内ということで。
お正月はお年始やなにかで「おもてなし」を受けた方々も、「おもてなし」をした方々も多いことだと思います。
年頭はその話題からスタートします。今年も毎週火曜日に更新していく予定ですのでご愛読のほど、よろしく!
さて、訪日外国人が増える中で「おもてなし」というのも色々言われているが、高級料理を出して相手にお金を使わせるのが「おもてなし」ではないだろう。
もちろん、舞妓さんに代表される京都の「お茶屋の文化」には無形文化財の価値があるとは思う。ただ、誰もがそれを楽しめるわけではない。
このあたりは和食が世界遺産とかになったのでアピールの積極性が高まっているのだろう。それはそれで良いのだが、相手の希望も考えずに和食を出したのでは「おもてなし」にはならない。
それでは外国人は日本に来て何を希望し、何を期待しているのだろうか?
「ホットペッパー」というクーポンマガジンがある。先だってこの雑誌が外国人相手にアンケート調査を行った。対象となったのは中華人民共和国、中華民国、香港、韓国、タイ、アメリカであった。
それぞれ100人ずつ、計600人の回答を集めた。その人たちが日本に来た目的というのは1位が何と「日本食を楽しむ」なのである。
以下「都市で買い物を楽しむ」「自然や風景を見て回る」と続き、「歴史的な建物や町並みを楽しむ」は6位なのだ。
さてさて、今度はその人たちが実際に食べて美味しかった日本食とは何かというと、
ラーメン!!!
おいおい、ラーメンが日本食かというツッコミが入りそうだが、中共、中華民国や香港と言った本場の人たちがラーメンは日本食だと認めているのである。
2位の刺身はいかにもだが、巻き寿司が4位でにぎり寿司が13位なのは意外である。そのうち外国人も恵方巻を食べるようになるかもしれない。
健闘しているのはお好み焼きで9位に入り、すき焼きと並んでいる。しかも11位はたこ焼きと焼きうどん。侮りがたし、粉もん!
そしてトンカツ(カツ丼など含む)が3位、カレーライスが7位。
ふふふ、唐揚げとハンバーグは苦杯をなめたな。
一覧表を眺めてみると、庶民的なものが並んでいる。
そりゃそうだろう。旅行を楽しくしてくれるのは「元気」と「天気」と「お金」だが(この三つが有ると無いとではかなり差が出る)、いくらお金があっても外国人がおいそれと京料理の老舗には入れるものではない。
偉い人たちが行くような高級店はランク入りしないのだ。
では、この人たちは実際にどんなお店に行ったのか。
1位はやっぱりラーメン店!!!
ほとんど半分近い人が行っているのだ。しかし、お好み焼屋も9位で健闘している。しゃぶしゃぶより上だぞ。
私はここ何年か居酒屋で外国人を見ることが多いので、順位はもっと上かと思ったのだが、8位と低かった。
そこでこれらの日本食を食べた満足度なのだが、
半分以上の人が満足しているのである。しかも
不満と答えた人はゼロ!!!
恐るべし、日本の庶民の食文化!
ラーメンは中華料理から派生した日本食である。カツ丼は和洋折衷の最高傑作である。カレーライスの端に添えられた福神漬けは画竜点睛の極地である。
「おもてなし」を語るべきは有名店の主人ではなく、庶民の店のオッチャンやオバチャンであろう。
では、どのように語ればよいのか?
答・何も語らなくて良い。
いつもと同じが最高なのである。
どんな有名人やお偉いさんが来店しても気取らず、慌てず、気を使わず、「いつもお客さんに出しているのと同じものを食べてもらいます」というのが「おもてなし」である。
相手を見て急に普段とは違う高級なものを出しても仕方が無い。
「いつもと同じ」
奇を衒ったり、変に気を使ったりせず、外国からのお客さんをいつもと同じようにお迎えする、これが「おもてなしの極意」なのである。
そう、自然体で接すること。
これが最高の「おもてなし」だと思う。
【言っておきたい古都がある・115】