ガラパゴスは永遠なり
~スマホは消えてもガラケーは残る~
私はかつてこの連載で「ガラパゴス礼賛」というのを書いた。
月日が経ってこれの正しさを実感している今日この頃である。
まず、パナソニックは平成26年に1040万台のガラケーを出荷した由。パソコンが919万台、デジカメが578万台、薄型テレビが545万台というから、このガラケーの健闘は立派ではないか。
もちろん、二台持ちでガラケーを持っている人も多いだろうが、「この世からガラケーが無くなるまでガラケーを使い続ける」という人もいるのである。
人は「スマホがあれば何でも出来る」と言う。
私は「それは違う」と言う。貴方は
「スマホが無ければ何も出来ない」
が正しい。まあ、少しへりくだって
「スマホが無ければ何も出来なくなる」
と言い換えても良いが。
だいたい以前に私の耳に入っ来てたのはは「電池がすぐに切れる」だの「落としたらヒビだらけになった」だの「データが飛んだ」だの「アプリが落ちた」だので、挙句の果てが「ライン乗っ取られた」とか。どう考えても使いたくない。
最近では、歩きスマホでポケモンGOをやっていた女性が用水路に落ちた。これが京都の「事件」なのだから唖然とする。
昔、二宮金次郎さんは歩きながら本を読んで賞賛されたが、今は歩きながらスマホをしてマヌケと言われる世の中になった。否、歩くどころか自転車に乗ってスマホをする輩もいるらしいから、そのうち自動車を運転しながらポケモンGOをやる豪傑も出てくるだろう。いや、もうすでにいるかもしれない。
今の世の中、あっちこっちで二宮金次郎の像にクレームをつけて撤去に追い込む人たちがいるけれど、じっとしていて誰の迷惑にもなっていない金次郎さんよりも、マジで危険な歩き&自転車スマホに対してもっと大きな声を上げたらどうか。こっちのほうが世のため人のためになるぞ。ん? まさか金次郎さんに文句を言う人が歩きスマホでポケモンGOをやってはいないだろうな。
かなり古い作品になるが、フレデリック・ポールのSFに『臆病者の未来』という長編がある。これに「快楽の友」という「道具」が出てくるのだが、これがスマホと一緒なのである。ただ違う所は、この「快楽の友」というのは喋る。しかも持ち主とちゃんと会話するのである。
持ち主が「歴代アメリカ大統領の名前を教えてくれ」と命じればすぐに初代から順にスラスラと答える。「メッセージが届いてます」とか「コマーシャルがあります」とか、人間が指で操作することは何もない。機械に喋ればよいのだ。
さらにこの「快楽の友」というのは中々人間的で、届いたコマーシャルが蓄積されていくのに持ち主がそれを聞いてくれないと、吐き出したいジャンクメールがどんどん溜まっても吐き出すことが出来ないわけで、その状態が続くと「快楽の友」は人間が「大便を出したいのに出せずに我慢している状態と同じになる」のである。
もちろん、この「快楽の友」は有料のサービスで、お金が払えなくなると取り上げられる。そうして「無防備」になった者に身の安全は保障されない。故に、「快楽の友」を取り上げられた者たちはそれを隠すためにダミーの「快楽の友」を持つ。ただしそれも有料なのだが。
こうして人は誰でも「快楽の友」無しには生きていけなくなるというわけ。
これがフレデリック・ポールの描く未来である。
いずれスマホはこうなる。そしてそれはスマホではなくなる。
私が子供の頃見たテレビ番組に「ウルトラセブン」というのがあった。この中では腕時計が通信機器になっていたが、これはわれわれが生きているうちに実現するだろう。この点からもスマホは無くなる。
スマホが消えるというのは、その上を行く新たな機械によって取って代わられるということ。しかし、その後でもガラケーは残る。だってそうでしょ、スマホに取って代わられたはずなのにガラケーは生き残っているのである。この先もガラパゴスのゾウガメのように生き延びていくだろう。
いよいよスマホの出荷台数の伸びにも翳りが見え始めたという。
次は何が出るのかは知らないが、日本のメーカーよ、ウルトラセブンの腕時計型通信機を作れ。スマホなんか持たなくても情報が得られるようにしろ。
だいたい、今のスマホもゲームをやっている人が圧倒的に多いのではないのか。いずれスマホは昔の単なるゲーム機と同じになる。
しかしそれでもガラケーは残る。
現実に「快楽の友」が開発されて、それで電話が出来てもガラケーは残る。
だってそうでしょ。「快楽の友」で電話をすれば、会話の内容はすべて「快楽の友」に聞かれてしまうわけである。
一見、便利が悪そうなガラケーは、相手と一対一で通話できる機械として残る。
ガラパゴスは永遠なり。
【言っておきたい古都がある・199】
来週コラムの連載200回目です!
谷口年史さんの「言っておきたい古都がある」は、平成24年6月5日、第1回「あきれカエル? ひっくりカエル? 〜新興宗教だって真面目にやってる〜」から4年余、京都の話題のみならず、国際的、国家的な課題疑問、さらには幽霊界の謎にいたるまで200回に及ぶこととなりました。
プロフィール、バックナンバーリストは、
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コラム連載200回を記念して谷口氏主宰の「京都ミステリー紀行」に読者の皆様をご招待いたします。
内容、応募詳細は
200回記念招待 http://kyotocf.com/news-hop/event/kyo-mystery-200/
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