「おさんかい」カフェ論
もっと上へ、もっと上へ…。というわけでは、ないけれど。
「おさんかいカフェ」について、考えてみました。
人間が最も怖いと感じる高さは、地上から7mとか、10mぐらいの高さだという話を聞いたことがある。それ以上の高さになると現実味がなく、恐怖感が麻痺するらしい。
そう言えば、大学時代にアルバイトで高所作業車(電線の工事とかで使われているあの車)のゴンドラに乗ったときは、それは怖かった(高い上に、けっこうグラグラ揺れた)。高いところが苦手であるから、僕にとっては鬼門も鬼門。あとバンジー。あれがたぶん、今まで生きてて一番怖かった。10年以上前、ムリヤリ仕事で飛ばされたことがあるのだが、ノーマルバンジー → サイドバンジー → 逆バンジーを、10分刻みで続けざまにである。約6mか7mぐらいの高さから、自らの意志で飛び降りるノーマルバンジーが一番怖かった。当時の僕、よく飛んだ。偉いぞ。
そう言えば、地上35mまで吊り上げられたサイドバンジーは、確かに何だか現実味がなくキョトンとして、「えぇ景色やなぁ」ぐらいの感じだったような…(逆バンジーは「飛び降りる」のではなく「飛び上がる」ものだから、動き出すまではブランコに乗っているようなもので、怖くなかった)。
前置きが長くなってしまったが、何が言いたいか、というと、地上7mとか10mとかいう高さは、ちょうどビルの3階ぐらいになるのだ(もちろん個体差はあるが)。
「おにかいカフェ」とカテゴライズした編集、特集では、地上2階部分にあるカフェ・喫茶をご紹介しているわけだが、それ以上の階にもカフェはある。
おにかいカフェの窓から、眼下を行き交う人の流れを見るのは本当に楽しいし、気持ちに余裕を持てると思う。ところが、3階より上になると、視線が下ではなく、上を向くような気がするのは、僕だけだろうか。もちろん下を見たって、建物の中であるから怖くも何ともないのだが、3階の窓からは何となく空とか、向かいのビルのそのまた上とか、そういう方向を眺めているような気がする。
編集部のご近所さんで言うと、六角高倉の「TRACTION book cafe」。あらたさん(カフェと言えば…な人である。)と打ち合わせをするときなんかは、だいたいこの店に来るのだが、この店には何というか、浮遊感がある。特に窓際にいなくても、「ここは高いところなんだなぁ」という感覚(雲の上というと大げさだけれど)があって、適度にフワフワした感じが、なんとなく心地良い。
これも事務所の近所であるが、「Cafe & cake Sugary」。行くときはバタバタとお土産にするケーキを買って帰るだけが多いが、お隣の「san-ai hair」のオーナーなんかとばったり出くわす(サボってはるの?)と、お茶したりする。この店も3階で、ここでは空よりも天井を見ていることの方が多い気がする。街なかで、あの建物で、あの高さの天井であるから、別に同業者ではないけれど、羨ましいなぁ、と思う。
「結局、空見てねーじゃねーか」と言われたらそうなのだが、一度、試しを。「おにかい」と、「おさんかい」の違い。「あ、ホンマや」と、思ってもらえると思います。
文/竹中聡(2009年掲載時編集長)
TRACTION book cafe
トラクション ブックカフェ
■京都市中京区六角通高倉東入ル堀之上町129番地
プラネシア六角高倉3F
http://www.traction-bookcafe.com
(文中のカフェ&ケーキ シュガリーは現在[2011.8]休業中です。)