樂焼って何だろう? 炎の中の赤と黒
真夜中の樂家。樂焼の窯は静かに炎を灯す。
硬い備長炭がパチパチと声を上げ、鞴(ふいごと呼ばれる木製の人力送風装置)から優しく柔らかな風が送られる。
月明かりの下、窯場の炎は凛とした空気に包まれている。
夜の冷たく澄んだ空気と、窯の暖かな炎が生み出す緊張感。
茶碗はまだ窯には入らない。窯そのものにエネルギーが蓄えられる。窯場自体がまるで精神統一をしているかのような、そんな時間が流れていく。
ちょうど月が隠れて太陽が顔を出そうとする時、もうそろそろどう? と炎に包まれた窯が話しかけ、最初の茶碗が託される。
その頃には鞴からも強くしなやかな風が送られ、備長炭もバチバチと炎を纏う。
炎は人がコントロールしようとも簡単にはできない。自然の奔放さを感じ捉えないと、たちまち業火と化してしまう。
炎に包まれた茶碗は真っ赤に輝き、産声を上げる瞬間をじっと待ち望む。
失敗を繰り返した経験の中で得た絶妙なタイミングで、真っ赤に燃え光る茶碗は、鉄鋏(てつばさみ)で窯から引き出される。
窯の温度が下がらぬよう、一瞬のうちに炭が避けられ、次の1碗が窯に託される。
そこに集う人々は勿論のこと、窯場や窯、鞴、炭、真っ赤に燃える炎など全てのものが呼吸を合わせて、1碗、そしてまた1碗と、ひとつずつ丁寧に。
そして太陽が沈む頃、炎を喰らい続けた窯は、ついには悲鳴を上げてその終わりを告げる。
今から約450年前、千利休が考える「侘茶」の思想を現す茶碗を創造する為、樂家初代・長次郎は他に類を見ない特殊な焼成方法で茶碗を生み出しました。
樂家では、現在でも変わらず窯の炎を守り続け、新たな茶碗が生まれています。
今回の展観では、初代長次郎の黒樂茶碗「萬代」や3代道入の赤樂茶碗「僧正」、5代宗入の黒樂平茶碗「古池」、15代吉左衞門の焼貫黒樂茶碗「老鴞」などが並びます。個性に富んだ赤樂茶碗や黒樂茶碗から、その内に潜む熱量を感じて頂ければ幸いに存じます。
開館40周年 夏期展
☆★☆★ 樂焼って何だろう? 炎の中の赤と黒☆★☆★
■開催日時:2018/6/30~8/26 10:00~16:30 (入館は16:00まで)
休館日/月曜日(祝日は開館)
■開催場所:樂美術館 京都市上京区油小路通一条下る
■料 金:大人900円 大学生700円 高校生400円 中学生以下無料
■お問合せ:075-414-0304
■U R L:http://www.raku-yaki.or.jp/