ジオラマとパノラマ ― Diverting Realities
”書き割り的世界”の見方
若手作家とベテラン作家が出会うことで、現代美術が抱えている問題を浮き彫りにし、新たな展開を探る展覧会シリーズNEW INCUBATION。本展は、出展するアーティストにとっても、鑑賞者にとっても、刺激に富んだ挑戦の場となることを目指しています。
第8回となる今回のNEW INCUBATIONは「ジオラマ」と「パノラマ」をキーワードとして、ベテラン作家として伊藤隆介、若手作家に中田有美を招きます。ジオラマとパノラマは、つくりものの背景と立体的な模型を組み合わせて本物のように見える錯覚を生み出す視覚装置として発明されました。本展では、「本物らしさ」から視点を転換させて(diverting realities)、それらの機構が生み出す現実感のズレや揺らぎに焦点を当てます。『ジオラマとパノラマ ――Diverting Realities』では、こうしたテーマをもとにそれぞれの作家が取り組んでいる作品シリーズ「Realistic Virtuality」と「背景の背景」から展示が構成されます。
伊藤隆介 / Ryusuke Ito
1963年札幌市生まれ。シカゴ美術館付属大学大学院修士課程修了(MFA)。1980 年代より活動する実験映画およびファウンド・フッテージの作家であり、漫画・美術・視覚メディアを縦横に切る批評家(村雨ケンジ名義)でもあり、近年の映像インスタレーション「Realistic Virtuality (現実的な仮想性)」シリーズでは美術作家として国内外で高い評価を受けている。「Realistic Virtuality」は、我々を取り巻くメディア社会について、視覚的・詩的批評を試みるビデオ・インスタレーション作品の連作。自作のミニチュア・セットと、それをCCD小型カメラで撮影したライブ映像を同時に展示することにより、「現実」と「メディア(マス・メディア)が運んでくる現実」の “段差”を表現する。主な個展として、『伊藤隆介ワンマンショー;ALL THINGS CONSIDERED』(札幌宮の森美術館、2014)、『天神洋画劇場 伊藤隆介の「フィルム・スタディーズ」』(三菱地所アルティアム、福岡市、2016)。グループ展には、『第4回 恵比寿映像祭:映像のフィジカル』(東京都写真美術館、2012)、『Re:Quest-1970年代以降の日本現代美術展』(ソウル大学校美術館、2013)などがある。
中田有美 / Yumi Nakata
1984年奈良県生まれ。2016年京都市立芸術大学美術研究科で博士号取得(美術)。自画像の仕組みを描き手の側面から分析した博士論文「不可能な自画像――不可視のわたしと世界の不可視を見るための方法」で梅原猛賞を受賞。自画像、風景画、静物画などの古典形式絵画に通底するルールを一部逆転解釈し、不均衡な油彩画を描く。また巨大なインクジェットプリントの上に油彩画を置き、両者をわけへだてなく提示する「背景の背景」シリーズに2014年から取り組んでいる。2016年4月より京都の東山にあるHAPSスタジオで制作中。個展として『不可能な自画像』(京都市立芸術大学小ギャラリー、2016)、主なグループ展には、『The Hundred Steps』(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、2015)、『egØ-「主体」を問い直す-』(punto、京都市、2014)、京芸Transmit Program #3 『Metis-戦う美術』(京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA、2012)など。
NEW INCUBATION8 伊藤隆介×中田有美
☆★☆★☆ 「ジオラマとパノラマ ― Diverting Realities」 ☆★☆★☆
■開催日時:2016/6/10~7/18 10:00~20:00
会期中無休 ※7月14日~16日は祇園祭のため17:00まで
■開催場所:京都芸術センター ギャラリー北・南
〒604-8156 京都市中京区室町通蛸薬師下る山伏山町546-2
■料 金:無料
■お問合せ:075-213-1000 E-Mail:info@kac.or.jp
■U R L:http://www.kac.or.jp/