立ち呑・焼きとり てら
おっちゃん×常連のボケ対決が見モノ
上戸に負けず、下戸だって粉もんにはめっぽう弱い。それが壷味の「ジャンたこ」とくりゃ、ヘソ天でお腹見せちゃうワンコのごとき気分になる。店の軒先は着の身着のままやって来たご常連が鈴なり状態。むりくり割り込み茶を頼む、私の勇気を褒めてあげたい。「なんや、あんたお茶かいなぁ?」と一人のご常連。「わしのもコレ、お・ちゃ・け。かっかっかっ」。酒場ギャグ、最高っす。そうこうするうち、「はいよー、でけたでー」とおっちゃんの声。すかさず「熱いうちにはよ食べやー」とおばちゃん。おしどり夫婦の人情も、もれなく隠し味となる。
シラフの私に立ちはだかる、うらぶれた雑居ビル。腹をくくって中へ入れば、クネクネ曲がる怪しい通路。おぉ、ここはまさに都会のラビリンス。迷宮の奥に潜むのは、人柄がすこぶるよいと評判の寺迫さん(愛称:てらちゃん)のイッパイ呑み屋。「仕事のあとは、やっぱてらちゃんの顔見んと…」「俺は週に3回来るから『シュウサン』と呼ばれとる」。ガタイもよくてノリもいい兄さん方に挟まれて、ウーロン茶をちびりちびり。愛すべきてらちゃんは、眉をハの字にして静かに笑顔。無言の包容力がある。ささくれた心のトゲを束の間、抜いていただいた。