京都のカツサンドたち
拝啓 ジョン・モンタギュー伯
お陰様で、今日もパンライフは、豊かです。
ある日、携帯電話が鳴った。
『もしもし〜、志津屋さんって、この辺どこにあったっけ〜?』
この辺、とは本誌の編集部がある六角烏丸、もしくは電話の主の勤め先、α-STATIONがある四条烏丸と思われた。
『四条烏丸、っつーか、大丸の向かいらへんにありますやん。どないしはりましたん?』
『カツサンドって、予約要るんかなぁ?東方神起に差し入れしよーと思うねーん♪』
電話の主は「キヨピー」こと、人気DJの谷口キヨコさんである。ご熱心ですなぁ。
サンドイッチといえば、18世紀の英国貴族・第四代サンドウィッチ伯ジョン・モンタギューが大のカード好きであり、ゲームに興じている最中に手早く食べたいということから発明された逸話が有名であるが(遊びではなく執務中に手早く食べたかったとか、諸説あるみたいだが、要はものすごく忙しい人だったんだな)、これほど我々に身近なパンの由来が人の名前(正確には領地の名前だが)というのは、改めて考えるとすごいことである。
そのサンドウィッチ。フィリングが「タマゴ」とか、「ツナ」とか、ではなく、「カツ」になると、これはもう、かなり「えぇもん」である。サンドウィッチの王様なんである。だから文頭のエピソードが成立するんである。
東方神起への差し入れになった「志津屋」の「元祖ビーフかつサンド」は、同社のフラッグシップ商品である。カツはカツでもビーフであるから、パンの世界でも肉食文化が関西、とりわけ京都では牛肉であることを如実に表している好例でもあろう。
とは言え、「カツと言えばトンカツやろ!」というのも正解で、というところで「かつくら」のカツサンド。「志津屋」が「パンでカツをはさんだ」のであれば、こちらは「カツをパンではさんだ」ものである。そりゃトンカツ専門店のカツサンドであるから、これもむちゃくちゃ美味い。
いずれもランチ時はもちろん、いわゆる「おもたせ」だったり芸舞妓や南座に出演している役者さんたちへの「楽屋見舞い」だったり、自分で食べても他人が食べても、あらゆるシーンで重宝される。
本誌で「月間 舞妓自身!」を連載中の真箏さんも楽屋見舞いをいただいていることだろう。これほど京都らしいパンもない、と言えるかもしれないのが、カツサンドなのである。J・モンタギュー伯爵、よくぞ考案して下さった。
敬具
志津屋のビーフカツサンド 430円
京都人ならきっと誰もが一度は口にしたことがある志津屋の「元祖ビーフカツサンド」。
厳選した素材を使用し、サクッと香ばしく軽い食感のパン粉をつけて揚げたアツアツのカツに、秘伝の特製ソースで仕上げたサンドウィッチ。
創業以来伝統の味を守り続け、なんと価格も昭和40年代のままだというのも驚きである。
志津屋 四条烏丸店 (パン / 烏丸駅、四条駅(京都市営)、烏丸御池駅)
夜総合点★★★★☆ 4.0
昼総合点★★★★☆ 4.0
京都市下京区東塩小路高倉町8-3 JR京都駅八条西口
075-692-2452
7:00〜22:00 / 無休
http://www.sizuya.co.jp/
かつくらのヒレカツサンド 990円
牛肉文化の京都で「カツ」と言えば牛だが、「とんかつ屋のカツサンド」をコンセプトにする同店は当然、豚である。3年程前にテイクアウト用に誕生した「ヒレカツサンド」は作り置きせず、オーダーしてから揚げるスタンスを貫いている。美味いのは当然、近隣の企業から「昼食用に100個!」なんて注文も入る求め安さは、ある意味、採算を度外視した食人気質な逸品だと思う。
名代とんかつ かつくら 四条東洞院店 (とんかつ / 烏丸駅、四条駅(京都市営)、河原町駅)
夜総合点★★★★☆ 4.5
昼総合点★★★★☆ 4.5
京都市中京区東洞院通四条上ル
075-221-4191
11:00〜22:00(LO 21:30)/無休
http://www.fukunaga-tf.com/katsukura/