山さんラーメン

一杯のラーメンのために休日を費やすのも、きっと悪くないし、それだけの価値がある。惚れたあの味を追いかける旅、この週末にでもいかがだろう？

「山さんラーメン」と言えば、「伝説の三屋台」に数えられる岩倉のラーメンである。その店が、今は滋賀県守山市にある。３年半ほど前、屋台から店舗になって16〜17年、京都の名店に突然その日はやってきた。「大家さんが突然いはらへんくなってしもたんよ。そしたらセイリカイシュウキコウ（整理回収機構）のおじさんが２人来はった（笑）」。宣告を受けたのが９月、明くる３月にはその物件が競売にかかるという。
「これを機にいっそやめてしまうか」と、思うにはまだ惜しかった。まだまだできる。即決派のお母さんともども、お嬢さんやお嫁さんがいる滋賀県に移転を決めた。
以来、予想外と言えば「お酢はありますか？」と客に問われれば、「ない！ワシとこのは酢を入れても美味くならん！」と一括した、画に描いたような頑固者のご主人の元気がなくなってしまったことだが、
「『主人はいません』言うた方が、みんな来てくれはるんちゃうやろか（笑）」とお母さんは笑う。
ご覧のとおり、今は女性３名の細腕繁盛記を地で行く。「細いことあらへん、太腕やがな！」と、お約束のオチまで付けてくれたお母さんは、お孫さんにも囲まれて元気元気、京都のラーメン好きなら誰もが「安心する」あの味は、今日も健在なのである。