隠れ里に点る今夏の漢字一文字 / 雲ヶ畑松上げ
漆黒の闇が覆う山並みに向けて、小松明が円に回された。
向いの山の中腹で待機している青年団への、点火の合図である。
8:20頃、 高雲寺からの松明と掛け声に、呼応する声とともに赤々と揺らめきだす火。
今年の文字は何かと・・・いち早く読み取ろうと懸命になる。
漆黒の山間に「平」の一文字が浮かび上がった。
五山の送り火のようでもあるが、雲ケ畑の松上げは、 火除けと五穀豊穣を祈願する愛宕信仰の献火である。
雲ヶ畑松上げは、花背や広河原の松上げの形態とは異なり、
約4m四方の櫓を組んで松明を文字の形に取付け点火される。
その文字は毎年異なり、点火されるまで秘密にされている。
雲ヶ畑にある高雲寺と福蔵院は、 8月24日に行われる 行事の2ヶ寺として知られている。
雲ヶ畑松上げ ・ 高雲寺
京都市北区雲ヶ畑中畑町190
交通:地下鉄烏丸線「北大路」
→雲ケ畑バス~もくもく号~雲ヶ畑岩屋橋行「高雲寺前」「出谷」「福蔵院前」
京都市無形民俗文化財「雲ケ畑松上げ」の問合先 075-406-2001(北区役所雲ヶ畑出張所)
九龍山(くりゅうざん)と号し、臨済宗永源寺派に属する。
この地は、文徳天皇の第一皇子惟高親王(これたかしんのう)が閑居された高雲(こううん)の宮址と伝えられ、
貞観11年(869)、親王は、ここで落飾され、宮を改めて当寺を創建したといわれている。
創建当時は、真言宗の祈祷所として栄え、祈祷を行う際には、村役人をはじめ里人が集まり、
謡曲の「田村」を奉納したり、寺に柩を近づけないなどの風習があったと伝えられている。
寺宝には、
惟高親王が書写したといわれる大般若経(惟高般若(これたかはんにゃ))六百巻のほか、
近郷の人々がこれを拝むとすぐに病が治ったと伝える
大般若経説相図や貞観時代(859~877)作の薬師如来像、山越如来像などがある。