茅の輪潜りにきゅうり封じ
サプリメントだけでは物足りない方にお勧め
祇園祭も終焉を迎えようとしている京都。
夏の疫病を起こす悪霊を鎮める祇園御霊会(ごりょうえ)を起源にした八坂神社の祭礼は、7月31日の夏越祭で幕を閉じる。
境内の疫神社の鳥居に、大茅輪を設け、参詣者はこれを潜り厄気を秡う。
この茅の輪(ちのわ)潜りは、6月30日に市内の各神社では行われ、新暦で夏越の祓いが執り行われている。
このおまじないは、半年間の罪や穢れを祓い、残る半年を無病息災で過ごせるようにと、古くより英々と行われている。
遡ると、701年大宝律令が制定された時には宮中の行事に定められ、朱雀門前に親王から官僚に到るまでが参集し、六月晦大祓詞(おおはらえのことば)が読み上げられ、国民の罪や穢れを祓い祈ったという。
これが、後に神に向かい唱和されるようになり、大晦日もこの祝詞に準じて行われている。
この夏越の祓いのとき、蘇民将来の神話にある茅の輪の生命力に、災厄除けの信仰の起源を見出し、茅の輪潜りは続けられている。
知る限りでは京都での夏越祭茅の輪潜りは、旧暦で行う八坂神社と御香宮神社(ごこうぐうじんじゃ)が最後となる。
夏の厄除け、疫病退散を茅草(かやくさ)の威力に託しているのが神社なら、寺院はどうなのかと考えてしまう。
よくしたもので、京都の寺院では、夏のこの時期に病封じを行ってくれている。
その病封じは、きゅうりとかぼちゃを用いる。
この病封じを「中風(ちゅうぶ)封じ」と呼ばれることが多いが、これは東洋医学用語であって、中風という病名を分かる人は少なくなってきている。
今風に言えば、脳卒中や脳出血の発作後にあらわれる、半身不随などの病気で、老人病だから関係ないというイメージを持っている若者も多いが、そうではない。
原語の意味は、風邪(ふうじゃ)が体に侵入することによって起こる症状で、発熱・発汗・咳・頭痛・肩のこり・悪寒を指している。
さて本題にもどるが、
京野菜で名の知れた鹿ヶ谷かぼちゃで中風を封じてくれるのが、安楽寺である。
江戸末期に、「土用の頃に、鹿ヶ谷かぼちゃを食すれば中風にならない」との阿弥陀如来のお告げを、真空益随(えきずい)上人が受けたのが始まりと言われている。
毎年7月25日には、かぼちゃ供養が営まれ、読経のあとふるまわれる。瓢箪型をした鹿ヶ谷かぼちゃは、おまじないに留まらず栄養価が高く、リノレン酸、リン、ビタミンCなどが菊座かぼちゃの数倍あるという科学的裏づけも実証されている。
一方、きゅうり封じであるが、この歴史は更に古く、平安初期弘法大師が中国から伝え、北嵯峨の岩屋の石にその秘法を刻み、諸悪退散、諸病平癒の秘法を後進に残したと聞き及ぶ。
その秘法とは、きゅうりに、名前、数え年齢、願い事を書き、加持祈祷を受ける。
加持されたきゅうりを以って、真言を唱え三日朝晩に、悪いところを摩る。そして四日目の朝、清浄な土に埋めるか、あるいは川に流すのである。
これにて、一切衆生の病苦、悪業の根を断ち切り、健康で長寿し、安楽に往生できるらしい。
信心するや否やは、各人でお決めいただくとして、そのきゅうり封じの寺院は二箇所ある。
東寺、仁和寺と並ぶ京都三弘法のひとつ、西賀茂の弘法さんこと神光院と、真言宗御室派の別格本山、仁和寺の東隣の五智山蓮華寺である。
土用の丑の日を中心に行われるから、各自確認いただきたい。
神社の茅草か、寺院のかぼちゃか、きゅうりか。
スピリチュアルな夏を過ごすのは、京都にはお似合いではないか。
少々文明社会から離れて旅してみようか。
疫神社夏越祭 (八坂神社)
http://www.yasaka-jinja.or.jp/event/ekijin.html
茅の輪神事 (御香宮神社)
http://www.kyoto-jinjacho.or.jp/shrine/09/040/
かぼちゃ供養 (安楽寺)
http://anrakuji-kyoto.com/archives/6064
五智山蓮華寺
http://rengezi.com/