知られざる祇園祭 / 鱧祭り
祇園祭で2万匹ものハモを食う
後祭の「山鉾巡行」「花傘巡行」「還幸祭」を終えると、残すところ同月28日の「神輿洗い神事」と31日「疫神社夏越祭」である。
28日の午後9時頃には、八坂神社境内の神輿庫に神輿は収められる。
10日の「神輿洗い」から数えて19日間のお役目を勤め終える次第となっている。
収蔵前の神輿洗いの様子はこうだ。
舞殿に「東御座」「西御座」の二基を据え置き、八坂さんから松明(たいまつ)に囲まれ担がれる「中御座」の勇姿は、やがて四条大橋にたどり着く。
遠目に八坂の朱色の西楼門、右背後に浮かび上がる南座の大屋根を背に「神輿洗いの神事」が執り行われる。
宮川堤の鴨川から汲み上げられ、清祓いされた水に浸した榊が、左右左に振られる。神輿と共にこの清めの水に清められようと、多くの人が神輿を囲む。
その水しぶきは大歓声を呼び起こす。
こうして1ヶ月間の祇園祭も幕を閉じていく。
さて、この一ヶ月間に「鱧(ハモ)」は食されたであろうか。
鱧は京料理に欠かすことのできない食材でもあるが、京の夏のご馳走といえば鱧だ。
祇園祭は「鱧祭り」と異名をもつほどである。鯖ではない「鱧寿司」もある。
梅雨の水を飲んだ鱧は美味しいらしく、梅雨明けの頃が旬となり栄養価も高い。
生命力が強くて生きたまま京都にもち込める為、昔から大層珍重されていた。
他に活魚がなかった京都では、いきおい鱧の調理に工夫が施されるのは理の当然である。
京の料理人が、煮ても焼いても食せない硬い小骨を、はじめて制覇したのだ。
以来、鱧は京名物となっている。
その「骨切り」の技術は鱧料理を生み出し、他所では相手にされなかった食材を秀逸の美味に仕上げた。
「はもおとし(湯引き)」に「はも造り」、「はもの葛だき」や「はもしゃぶ」など、焼きハモ、揚げハモ、鱧寿司と揃えて「鱧づくし」としていただけるようになった。
「骨切り」は、僅か3センチ幅毎の身に24回もの包丁を入れ、皮を切らないのである。
骨をまったく感じさせなく切られた鱧は、口に入れると「ふわっと」ひろがる。
あっさり味の身は、湯に出逢うと、反り返って白い花を咲かせたようだ。
技術を昇華させ芸術の域にまで達するところが、まさに京都らしいと言える。
祇園祭の時期の京都中央卸売市場の「生けハモ」の入荷量をご存知あるまい。
初入荷では3.5トン、宵山前後には1日8トンも入荷し、その数は2万匹相当と言われている。空輸もされる昨今では、トロハモ(漁獲地で血抜き処理される、絞めたハモ)の入荷量を追い越し、約600トンに及ぶ。勿論その量は全国屈指である。
名残惜しい祇園祭の足洗いを「神輿洗い」と「鱧づくし料理」で締められてはいかがだろうか。
凶暴な魚の鱧も骨切り(抜き)にされて、きっと美味しくいただける筈だ。
祇園祭 神輿洗い神事 (京都神輿愛好会画像集)
http://mikosi.ddo.jp/17-B/gion-3/newpage1.htm
祇園祭の旬味、鱧。鱧料理の名店7選|きょうとあす by 婦人画報
http://www.trip.kyoto.jp/plan/hamo2016_0628/
京のおすすめ鱧料理 (京都の魚屋本田鮮魚店)
http://www.hondasengyoten.com/index.htm
鱧三昧コース&鱧十二撰 (京都天ぷら かふう)
http://www.t-kafuu.com/index.html
鱧料理・はもづくし (大喜久)
http://www.f7.dion.ne.jp/~daikiku/