元日詣
初詣の作法を知る
年越しの準備を済ませると正月がやって来る。
「一年の計は元旦にあり」と、大晦日の除夜の鐘とともに初詣に出かける方は多い。
初詣では、誰もが新年の節目を特に意識して、心新たに祈願をする。
そして、詣(もう)でた後は、神社の持つ清らかな精気を持ち帰っている。
玉砂利を踏む音のアルファ波効果、境内の木々から発せられるマイナスイオン効果と科学的説明を加える人もいる。今風に言えば「癒しの時空」と呼べる。
信仰心、宗教のない国民性を指摘されようと、正月ばかりは総出の参詣が見られる。
日本人も満更捨てたものでもない、喜ばしいことだ。
何はともあれ、初詣は今年一年の幸福の神様を呼び込む国民の最大行事であることに間違いない。
とすれば、神社参詣の基本的作法を復習しておこう。
? 境内に入る前の鳥居の手前では軽く一礼してから境内に入る。
? 手水舎(てみずや)では下界での穢れを落とし拝殿に向かう。手が汚れている汚れていないではない。
まず、右手で柄杓(ひしゃく)を持って水を汲み、左手にかけて左手を清める。 次に柄杓を左手に持ち替えて右手を清める。 そして柄杓を右手に持ち、左の手のひらに水を受け、その水で口をすすぐ。直接柄杓に口をつけることは誤りだ。すすぎ終えれば、もう一度水を左手にかけ、最後に水を入れた柄杓を立てながら柄に水を流して清め、柄杓置きに伏せて置く。
? 神前の通路を参道と呼び、その中央(正中という)を少し避け前に進み、お賽銭箱に賽銭を入れる。正中は神さまの通り道とされているので礼儀として避ける。
? 鈴を鳴らす。神楽鈴と同様で、その清らかな音色で神さまをお招きする意味と魔を祓う意味がある。
? 二拝(深いお辞儀を二回)二拍手一拝にて拝礼する。その前後に軽い会釈を加えると尚丁重である。二回手を打ち鳴らすことを「拍手(かしわで)」という。拍手は向かう相手を敬う気持ちを表現している。この拍手を打ったあとに、祈願ごとなどを念じる。
さて、初詣にどこの神社へ詣でるか、願い事に応じたご利益の高い神社を選ばれるのも良いだろう。
但し、お住まいされている氏神様には必ずお参りすること。願わくば崇敬される神社や有名観光神社へ参詣される前が良い。
ご利益別神社の解説は他に譲るとして、参詣する折の通の心得を紹介したい。
今年は自宅から出て「南南東」の方角にて目的の神社へ参詣していただきたい。
初詣の由来のひとつは「恵方詣」と言われている。
「恵方」とはその年の「歳徳神 (としとくしん)」の方角で、「たたり神」が来ない良い方角のことだ。
今年の「恵方」が「南南東」である。
江戸時代には、元日は各人の「恵方」にあたる社寺に参詣するのが恒例であった。
初詣で氏神様を外さないよう申し上げたのは、氏神様が各人の「産土の神」であり、神との由縁を持った神社だからである。つまり、神様の持たれる現世人のデータベースの項目分類に「生まれ住まう土地の神社」というものがあり、皆さんがエントリーされている管轄場所となっているという習わしである。
初詣の別名を「年籠(としこも)り」とも云われるが、「年籠(としこも)り」は大晦日の夕方から産土の神である氏神様の社に籠り、あるいは神社の前で夜を明かす風習で、氏神様と日本人の絆、縁の深さを表しているものだ。
都市化、核家族化の時代の中で、普段に氏神様との関係が意識されなくなってきているが、今も行われているところはある。これらのルーツの核は外さないで貰いたい。
したがって、小生の初詣は、一旦家を出て他の方向に向かい、氏神様が恵方となる地点で方向転換し、氏神様に向かうようにしている。それからご利益を願いに伏見稲荷大社に出向く。
こうしたまどろっこしいところにご利益があると思っているのだ。
初詣は「歳神(としがみ)」を呼び込む行事であるからして、クリスマスイブにサンタや彼氏がプレゼントをくれる様にあんちょこなものではない。それが当然であっていいのである。
初詣特集2006 (JTB)
http://www.jtb.co.jp/season/winter/hatsumoude/detail.asp?dest=08&dept=65