安倍晴明 / 呪術・式神
百鬼夜行の京の街を護る男
修験者や僧によって使役される霊に「護法童子」と呼ばれる存在が密教にある。
「護法童子」は神仏から遣わされている為、悪事をさせることはできない。
一方、陰陽師が使役する「式神」は、呪符により善事も悪事もこなすことができる。
「護法童子」も「式神」も常に二体が一組となって行動しており、能力・役割の差はないが、一体では用を果たせなかったという。
陰陽師は使役する式神を前鬼・後鬼(ぜんき・ごき)と呼び、日常には家事をさせたり、お供として連れ歩くなど重宝使いする者も多かったらしい。そのまま鬼の姿で連れ歩くにははばかるので、稚児などに変幻させるなど、早代わりの様相よろしく自在であった。
また、動物や人間に乗り移らせて、操る事も可能であったという。
陰陽道に特有な「式神」は、「占事略決」(安部晴明著)によると、北極星を中心とする星や方角を神格化した「十二天将」として、『貴人・騰蛇・朱雀・六合・勾陣・青龍・天空・白虎・大裳・玄武・大陰・天后』を。
太陽と月との会合点を神格化し、北斗七星との深い関わりがある「十二月将」として、『徴明・河魁・従魁・傳送・小吉・勝先・太一・天剛・大衝・功曹・大吉・神后』が列記されている。
加えて、鎌倉時代の随筆「新猿楽記」に、陰陽師は「三十六禽(さんじゅうろっきん)」を操ると記されている。
「三十六禽」とは人間を混乱させる魔物で、動物の精霊であり、時刻によって出現する動物霊として各々決まっている。
そして、管狐(くだぎつね)や犬神などを動物霊的なものとしながら、神格化する考えも根強く信仰されている。
さて、「式神」の使い方であるが、主に紙を材料として分身を作る。
人形(ひとがた)や鳥形などの身代わりの形代(かたしろ)ができると、呪文を唱え、その身代わりに息を吹きつける。息を吹きつけるときに「霊」を満身より込めることが重要であるらしい。その人形に、霊ゆかりの装身具を添えたり、霊力の強い人の血液をつけたりすることもあるという。
「式神」は一般的には目に見えない存在であるが、目に見せる場合は鬼や子供、動物、鳥などの姿をとらせるようである。しかし、一般に目に見えない存在であっても、霊力あるものの目には映るから厄介である。
京都の街に、鬼や天狗などがうごめき、百鬼夜行の姿を見たものの口承は民話としても多数残っていることがその傍証とも言える。
晴明は、占星術の一種である「式盤」を作り、読み解き(式占)、生物に宿る「物怪(もののけ)」や人の魂に宿る「怨念」を自由に操ること(式神)により、平安京を護っていたという。
その晴明も屋敷内の雑用を式神にさせていたが、家人には不評をかい、見せないようにしなければならなかった。
特に妻には相当な気遣いをしており、終いには、東向かいの「一条戻り橋」の下に封じて待機させて使役していたという。
朝夕はめっきり涼しくなってきたので、堀川通を一条戻り橋から晴明神社をめざして散策したくなってきた。そして、秋分の日頃には、晴明祭が執り行われるが、鼓笛隊を先頭に練る神輿巡行を追いかけてみようか。五芒星の晴明さんを偲んで。
神道と陰陽道
http://www.izumo-murasakino.jp/yomimono-030.html
怪異・妖怪伝承データベース (国際日本文化研究センター)
http://www.nichibun.ac.jp/youkaidb/
晴明神社
http://www.seimeijinja.jp/
安部晴明伝説 in 熊野 (熊野の説話)
http://www.mikumano.net/setsuwa/seimei.html