弘仁三年、幸神泉苑。お花見1200年
作庭家小川勝章氏が寄稿した「『桜時間』 を遡って」が巻頭を飾る「特集 京都、庭園のある風景」には三千院/等持院/東本願寺(渉成園)/神泉苑/無鄰菴/醍醐寺/真如堂/天龍寺/仁和寺/松尾大社の10カ所が名庭園の風景としている。
明治、大正の文豪的な香りのある文をかいた小川勝章氏のプロフィールは
1973年生まれ。幼少期の多くを庭園で過ごし、高校入学時より父である11代小川治兵衛に師事。立命館大学法学部を卒業し、造園植治に入社。新たな作庭に加え、歴代の手掛けた庭園における作庭、修景、維持も続ける。1級造園施工管理士。名城大学特別非常勤講師等を歴任し、京都市DO YOU KYOTO大使を務める。
とある。知性あふれる庭師のサラブレッドのようだ。ブログhttp://ueji.blog71.fc2.com/が詩的で味わい深い。興味を持った方は、造園 植治のWEB http://www.ueji.jp/を手繰ると良い。
10撰の中には無鄰菴(7代小川治兵衛作)の様に必ずしも桜名木はないが、桜の名所、蹴上インクラインが近いなどとして、桜本に取り入れるアタリは編者のご苦労が窺える。
注目したのは
神泉苑の項、ここポイント
『794年に造営された皇族の庭園で…今から1200年前にあたる812年には桜の花見の宴が日本で初めて公式行事として行われた場所と「日本後紀」に書かれています。』という記述。
日本後紀『卷廿二』弘仁三年(八一二)二月辛丑【十二】》○辛丑。幸神泉苑。覽花樹。命文人賦詩。賜綿有差。花宴之節始於此矣。
がその原文。調査を総合すると『嵯峨天皇が812年(弘仁3年)二月十二日に神泉苑にて「花宴の説」を催し、文人達に詩を作らせた。以降、831年(天長8年)から場所は宮中に移り、お花見は天皇主催の定例行事として行われました。』ということに落ち着くらしい。
これとは関係はないが、左の武者絵のように桜、花見、日本の関係深さは歴史に数多く残されている。
醍醐寺
なかでも、秀吉の醍醐寺の花見の逸話が桜の歴史からは逃せない。この冊子でも庭園の豪快さに触れられているが、醍醐寺三宝院大玄関前に咲く樹齢約150年の枝垂桜は訪れる人を迎えいれるかのように枝を広げている。
詳しくは
三宝院のしだれ桜の蘊蓄と写真をご覧下さい。
「花の醍醐」、太閤豊臣秀吉が贅を尽くした「醍醐の花見」催した寺で桜の花見の代名詞とも言える。彼岸ごろに憲深林苑で咲き始める、「かわづ桜」をかわきりに、しだれ、ソメイヨシノ、山桜、八重ザクラ、そして、「三宝院の大紅しだれ」と「金堂 大山桜」が咲き終わるまで約3週間、国宝・五重塔のシダレザクラ、醍醐寺霊宝館のソメイヨシノや八重桜など趣き深い寺院と調和した桜が咲き誇ります。
必読WEB醍醐寺 枝垂桜を歩く http://kyoto-brand.com/read_column.php?cid=5378
続醍醐寺 枝垂桜を歩く http://kyoto-brand.com/read_column.php?cid=5382
三宝院のしだれ桜 http://kyoto-brand.com/read_column.php?cid=5363
渉成園
神泉苑嵯峨天皇、醍醐寺豊臣秀吉とつなぐ接点が、東本願寺渉成園だ。9世紀末に嵯峨天皇の第12子・源融が奥州・塩釜の風景を模して作庭した六条河原院の故地とされ、名園名高い渉成園の河原町通側の築山が御土居の土塁として使われている。
御土居(おどい)は豊臣秀吉によって作られた京都を囲む土塁である。外側の堀とあわせて御土居堀とも呼ばれる。聚楽第、寺町、天正の地割とともに秀吉による京都改造事業の一つである。
必読WEB御土居
続 秀吉が京都に残したもの http://kyoto-brand.com/read_column.php?cid=5315
平安の都にやすらぎを囲い込む http://kyoto-brand.com/read_column.php?cid=5316
仁和寺
江戸時代の儒学者・貝原益軒は『京城勝覧』(けいじょうしょうらん)という京都名所を巡覧できる案内書でここポイント
「洛中洛外にて第一とす、吉野の山桜に対すべし、…花見る人多くして日々群衆せり…」
と記した。
金堂前の染井吉野、鐘楼前のしだれ桜などが競って咲き誇ります。そしてなにより中門内の西側一帯に「鼻が低くても人が好く」御室桜、別名『お多福桜』が咲く「御室御所」とも呼ばれた格調高い仁和寺。
寝殿の南北に庭園があり、左近の桜、右近の橘が植えられた南庭、池泉式の雅な北庭とそれぞれに違った表情が楽しめる。
必読WEB仁和寺 御室桜について http://www.ninnaji.or.jp/cherry_tree.html
洛中洛外京桜図 http://kyoto-brand.com/read_column.php?cid=5167
京の八重桜探訪 http://kyoto-brand.com/read_column.php?cid=5385
名木古木 御室桜 http://kyoto-brand.com/read_column.php?cid=5362