京の火祭・祭のはしご
心の起伏は火祭りに表されている
「時代祭」は平安建都1100年を記念して百年余り前の明治時代から始められたものである。
その10月22日の夜には「鞍馬の火祭」が執り行われている。
後者は平安中期、鞍馬寺の鎮守社である「由岐神社」の祭神が御所から鞍馬に移されたときに、鞍馬の村人が戸口にがかがり火をたいて迎えた故事にちなみ、鞍馬寺仁王門前の石段下に約200本の松明が並び、炎の乱舞する神事で、京都三大奇祭のひとつとして知られている。
鞍馬は御所大極殿の鬼門封じの北東のライン上に位置し、歴史的にみても京都に根ざした祭りといえる。
前者の観光行事としての京都イメージの祭と、平安京守護や京の地の精神を祭事とする後者の祭の違いが見えてくるはずだ。
同月同日は1日にして二つの顔を持つ京都を見ることができる。
(但し、令和元年の時代祭は10月26日に変更された。同月22日には天皇陛下即位に伴う「即位礼正殿の儀」があるため、主催する平安講社が協議した結果、「祝意と敬意を表するため」として、最も近い土曜日にあたる10月26日に時代祭の行列を行うこととなった。)
「鞍馬の火祭」は京都三大火祭のひとつでもある。後の二つは、8月16日の「五山の送り日」、3月15日の「清涼寺のお松明式」だ。
火に関わる祭りには「吉田火祭」「広河原の松上げ」「花背の松明」「岩倉火祭」などが挙げられる。
共通していることは、どれもが生活の一部として市民生活のなかに深く溶け込んでいる点だ。
火の扱い方は違えども、いかに信仰の世界と強く結びついているかが伺える。
2005年は一夜に火祭がはしごできる年であった。
「鞍馬の火祭」を終えた深夜3時(10/22・27時)に、岩倉の石座(いわくら)神社の二基の大松明に火が舞い、早朝5時に神輿が担ぎ出され巡行したのだ。朝神事と呼ばれるものである。観光スペシャルでは勿論、京都通を自称する京都人も案内してくれないものである。
「岩倉火祭」は素朴でひなびた心温まる祭で、見せる為のものではない。氏子達が楽しみ願い感謝する祭の原型が見られる。祭礼は旧岩倉村6か町から構成される「宮座」によって執り行われ、「鞍馬の火祭」で松明の製作や祭りを担う「大惣仲間」等の組織と同種で、伝統的な祭祀組織が残っている。大学生アルバイトはいないということである。
岩倉火祭のいわれは、むかし、石座に雄と雌の大蛇が住んでおり、村民に大きな危害を加えていた。神前の灯火で退治せよとのお告げの通 り、松明を点すと大蛇は現れなくなったそうだ。
大蛇に見立てられた全長12メートルの大松明は、頭の部分を抱えるには四人の男手がいる。
社の左右二基の大松明はその背に一直線に縄の結び目が12個もある。
火は古来から神聖なもので、火に対する畏怖の念は信仰の対象として、さまざまな祭祀祭礼に大きな影響を与えてきた。京都における火と水と信仰は語りきれないテーマである。
そうそう京都の祭で、「ワッショイ ワッショイ」は子供神輿でしか聞かない。
鞍馬の火祭は平安時代より「サイレイ サイリョウ」で、八坂神社の神輿をはじめ京都の神輿の大方は「ホイット ホイット」で、様々な囃子言葉がある。
【参考】
■鞍馬の火祭
▽日時 10月22日
▽場所 由岐神社
▽内容, 平安中期、鞍馬寺の鎮守社である「由岐神社」の祭神が御所から鞍馬に移されたときに、鞍馬の村人が戸口にがかがり火をたいて迎えた故事にちなみ、鞍馬寺仁王門前の石段下に約200本の松明が並び、炎の乱舞する神事で、京都三大奇祭のひとつとして知られている。
■時代祭
▽日時 10月22日(令和元年は10月26日)
▽場所 御所~平安神宮
▽内容, 明治維新によって衰退を見せた京都の町おこし事業として平安神宮が創建された。その折、市民組織「平安講社」により、平安時代からの装束を時代ごとにつけた時代風俗一大行列を行ったことに始まる。京都を元気にする人々の熱意の象徴として創始されたのが時代祭です。
▽イベント分類 火祭り
■清涼寺のお松明式
▽日時 3月15日
▽場所, 清涼寺
▽内容, 毎年3月15日「涅槃会(ねはんえ)」の法要のあとに行われる、春を告げる京都の行事の中で最も古い行事の一つ。 大文字送り火・鞍馬の火祭と並び京都三大火祭として受け継がれ、元来、お釈迦さんを荼毘(だび)した時の有様を表現したもの。嵯峨野の歴史と共に住民の心の中に生き続けてきた、郷土の伝統行事。
▽イベント分類 火祭り
■岩倉火祭
▽日時 10月26日 夜明け前3時(10月23日に近い土曜日)
▽場所 石座神社
▽内容 京都市登録無形民俗文化財二指定される火祭りで、鞍馬の火祭りを終えた夜明け前に行われる朝神事。
▽分類 火祭り
石座神社:京都市左京区岩倉上蔵町302
日時:10/26 午前2時〜6時半
アクセス:叡山電鉄「岩倉駅」北1km 岩倉実相院北側
時代祭
http://www.heianjingu.or.jp/03/0101.html
鞍馬の火祭
http://www.yukijinjya.jp
岩倉火祭
http://web.kyoto-inet.or.jp/people/thymu/himaturi.html
五山の送り火
http://www.kyoto-np.co.jp/kp/koto/gozan/dai.html
清涼寺お松明式
http://www5.ocn.ne.jp/~umejirou/sub12.htm