湯豆腐でない京の鍋
魚が捕れなくとも 京都発祥の鍋モノはある
今年も残すところ一ヶ月。これから師走の風が頬を撫でていくのだろうか。
吐く息の白さや、ホカホカの焼芋の湯気が、寒風の冬を演出するた゜ろう。
家路に急ぐ足取りは、間違いなく土鍋のぬくもりを欲しているように感じる。
さて、京都で「鍋にしょうか!」と言って、食べるものはと言うと・・・・・。
ぼたん・すっぽん・てっちり・あんこう、カニ・海老・鴨・かしわ・牛。
こんなところなのだろうか。
しかし、これらは日本の冬の鍋であって、これが「京都の鍋」という、ご当地ものはない。
その具材は京都盆地にないものばかりで、昔からメインの具は、他所からいいものを入れるしかなかったのである。
ところが、どの鍋にも共通の具材となると、やっぱり「京モノ」となる。京野菜や京生麩や京湯葉、京豆腐など、京の食材はどの鍋にも必須の脇役である。
そして、冬の京野菜で、食しておきたいものは、京菜・壬生菜・九条ねぎ・京せり・堀川ごぼう・えび芋・金時にんじん・聖護院大根などである。
そうそう、脇役の具のほかに「京仕立て」という鍋がある。
白味噌仕立ての味付けのだし汁で、いのしし肉を煮ていただく「ぼたん鍋」は京の定番であることをうっかりしていた。
甘味ではなく、コクと旨味を感じさせる白味噌仕立ては京野菜を引き立てる。
「もみじおろし」のサッパリとした酸味と、辛味とを絡ませるのが、小生は大好きである。
京仕立ての白味噌でいただく「ぼたん鍋」なら、「懐石 ぼたん鍋 畑かく(上京区上御霊前通烏丸西)」がお奨めである。いのしし鍋を「ぼたん鍋」と名づけたところである。
二十歳を過ぎた頃、西陣の織屋の旦那に、初めて連れてもらったところだ。
「えーとこで えーもんを たんと 食べとかんと 味の違いがわからんのや」これが旦那の口癖であった。
その旦那は、「高いだけでもあかんのや、すっぽんは大市、鶏の水だきなら鳥岩楼。」などなどと、今も変わらず声高に話す。
小生にすると、上(かみ)の店ばかり並び、わざわざ出掛けなくてはならないので、少々困ったこともあった。
リーズナブルでオリジナリティがあって、旨い店を探す習慣は、この旦那に教えられた。そんな店を一軒見つけた。鍋の名前「はんなり鍋」という鍋の名前が、目についたのがきっかけである。
その店は、1999年3月に開業した京鍋と創作おばん菜のお店「京麹(みやこうじ)」で、祇園(大和大路四条上る)で営業している。
常々、京野菜と京湯葉・京生麩だけの豆乳鍋が「京の湯豆腐」に並ぶ「京鍋」にならないものかと思っていたのだが、そのコンセプトと同じ類の鍋物が、「はんなり鍋」と名づけられメニュー化されていたのである。
こういう挑戦をしてくれる店がある限り、京都は廃れないのだと、小生は確信している。
歴史ある強豪の鍋ものに肩を並べるぐらいに、成長させていってほしいと願うばかりである。
京料理・猪鍋 「畑かく」
http://www.kansaihokenlife.co.jp/part/tabi/tabi-tosinose.html
鶏の水だき 「鳥岩楼」
http://www.galu-kyoto.com/shop/0335_toriiwa/
京鍋と創作おばん菜 「京麹(みやこうじ)」
http://www.do-planning.com/shop/miyakouji.html