大英博物館の名宝特別出展 ”古代ガラス-色彩の饗宴-” /MIHO MUSEUM
海外からも質の高いコレクションで高い評価を受けるMIHO MUSEUM。
2013春季特別展”古代ガラス-色彩の饗宴-”では、何を見せてくれるのだろうかと・・・
戸惑う気持ちのままに出かけた。
色鮮やかで高級なガラス食器や装飾壺などのガラス細工が並べられているのかとの思いは、
見事に裏切られた。
古代において、ガラスは金銀にも勝る貴重な存在で、人が作った魔法の宝石だったのである。
そして、メソポタミア周辺でガラスが発明されて以来、
ガラスが宝飾品や宝器である時代が二~三千年続き、
古代エジプトでは、ガラスは長い間ファラオの占有物だったという。
ファラオ頭部(おそらくアメンホテプⅢ世)エジプト
ツタンカーメンの祖父であり、アケナテンの父であるアメンホテプ三世は、エジプト第18王朝最盛期のファラオとして、巨大な人造湖を伴う豪華な宮殿や、エジプト各地の神殿建設で知られている。
当時のガラス工芸は、宝石を生み出す秘密の技法として王家の独占物で、アメンホテプ三世の宮殿内からガラス工房跡が見つかっている。等身大に作られたこの作品は、現存する古代エジプトのガラス彫刻として最大のものである。
極めて貴重だった青い宝石・ラピスラズリを再現するため、西方砂漠で発見されたコバルト原料と青銅を合わせて濃紺色を表現し、アンチモンを主原料とする白濁剤で不透明な重々しさを演出する。
目には黒色のガラスと白石を象嵌しており、彫刻としても第一級の見事な出来栄えである。ファラオ専属の技術者集団が王家の絶大な庇護の下、最高の原料と最大の努力を払って実現した傑作と言えよう。青いガラスの頭部を持つ神としての王像か、あるいはミイラ棺に取り付けられた顔面彫刻であった可能性も考えられる。
青を中心とした色付きの不透明なガラスが主流であった時代に、
やがて人々はガラスそのものの透明な美しさを発見する。
それは、ペルシャ人が手にしていた水晶に見まがうばかりの透明な大杯であり、
人々の驚きの的であったという。
獅子頭形杯 アケメネス朝ペルシア前5-前4世紀
古代ギリシアの喜劇作家アリストファネスの作品に、ギリシア人の使者が、当時の超大国ペルシアの宮廷を訪問し、大いに歓待を受けた場面が描かれている。ペルシア人はストレートの甘いワインを、金や透明ガラスの器に注いでもてなしたという。まさにこの作品が、その器であったかもしれない。
獅子の彫刻、全体が角形で同心円状のカットを持つことなど、当時のペルシア風デザインが遺憾なく反映されている。
鋳造によって作られ、アンチモンという物質を入れて天然ガラスの色を消したことが分かっている。ガラスの透明度や丹念なカットを見れば、極めて高度な知識と技術を駆使して作られたことがわかる。ガラスの角杯でこれほど完璧に残された作品は他に類例がなく、珠玉の名品と言えよう。
世界最古の透明ガラスといわれる大英博物館蔵の壺の展示があった。
サルゴンⅡ世の壺 新アッシリア(イラク) 前721-前705年
ガラスと言えば透明なコップや窓ガラスをイメージしがちだが、そのような無色透明に近いガラス製品が作られたのは、ガラスの発明から1500年以上も経ってからである。
年代のわかる最古の作品がこの壺で、型にガラスの粉を詰めて鋳造し石のような塊を作った後、中部を工具で刳り抜いて作られた。見つかったのはメソポタミアのティグリス河畔、当時オリエント世界に覇を唱えたアッシリア帝国の首都ニムルドにある北西宮殿で、多くのアラバスタ―製の小壺と共に発見された。壺の肩には、「サルゴンの宮殿、アッシリアの王」という楔形文字とライオンの姿が彫り込まれており、サルゴン二世(在位前720-前705)の時代に制作されたことがわかる。世界最古の透明ガラスとして著名な作品である。
ガラスの歴史は、その後「とんぼ玉」「モザイクガラス」
「カットグラス」「銀化」と進んでいく。
図録を眺めていると、見落としたものも多く、再度訪れたくなってきた。
次は、シダレザクラに囲まれた中をカートが走っているだろう。
■開催日時:2013/3/9~6/9 10:00~17:00(入館16:00まで)
※月曜日休館、ただし4/29・5/6は開館し、4/30・5/7は休館
■開催場所:MIHO MUSEUM
滋賀県甲賀市信楽町田代桃谷300
■料 金:大人1000円 高大生800円 小中生300円
■主 催:MIHO MUSEUM/岡山市立オリエント美術館/京都新聞社
■お問合せ:0748-82-3411
http://miho.jp
■駐車台数 大型20台 普通150台 (駐車無料)
■レストラン [PEACH VALLEY] レセプション棟
■喫茶室 [PINE VIEW] 美術館南館
※自然食品の選ばれた食材厳選美味