-5- 開発秘話 寿がきや豚骨しょうゆ
寿がきや開発秘話、「京都 豚骨しょうゆ」の味。
~その後のエピソード~
寿がきや「京都 豚骨しょうゆラーメン」
全国のコンビニエンスストア・量販店で発売中
前述が、’05年2月1日発刊号で紹介した寿がきや食品株式会社の「京都 豚骨しょうゆ」という京都ラーメンカップ麺の紹介内容である。
「東京でのネームバリューとして『ますたに』『天下一品』という店に行きつくのは理解できます。変に『京風らーめん』みたいなところに行くよりはよっぽど良い」
「後ネギ・先ネギ(お湯を注ぐ前に入れるネギと、後に入れるネギがある)は面白かったですね。アレは初めてやった。後ネギは輪切りですよね。シャキシャキ感を出したんでしょうね。スープは良くできてた。美味かったな」
「今までの京都のラーメンの名前を謳ったものの中では一番良くできてる」
といった具合に、京都ラーメン協議会からも、概ね良い評価を得た商品である。文末に「楽しみに待ちたい」と書いたが、去る11月14日から「バージョン3」とも言える同商品が、晴れて全国のコンビニエンスストアなどで新商品として発売されている。待った甲斐があったわけだ。
唐辛子をスープに混ぜ込んだり、背脂を多めにしたり、発売のたびに重ねるバージョンアップについては、今回はまず「ネギの増量」と「麺の増量」。これは単純に内容量の増加である。注目すべきは「背脂の再開発」である。スープに豚骨のコク・深みを加え、濃厚な京都味を追求したという。
ご当地ラーメンも進化する。それを受けて、わずか一年の間にカップ麺もこれだけ進化している。競争は激化するが、それに比例して、我々は確実に美味いラーメンを手に取れる。その恩恵を支える、開発努力の一端をご紹介する次第である。
ここで一つの例を紹介したいと思う。京都以外の土地で、「京都ラーメン」がどう定義されているか? ということである。これについては、寿がきや食品株式会社の協力を得た。名古屋に本社を置く同社では’99年以降の、いわゆる「ご当地ラーメン」の流行に着目し、即席カップノンフライ麺・高級タイプのカップ麺市場に参入した。商品として完成したのが「尾道ラーメン」「飛騨高山ラーメン」と、この「京都 豚骨しょうゆラーメン」である。ラーメン文化が決して成熟しているとは言えない名古屋にあって、「飛騨高山ラーメン」は、比較的本社に近いご当地ラーメンと言えるが、「和歌山」や「奈良」など、並み居るご当地ラーメンの中から「尾道」と「京都」がノミネイトされた経緯には、営業部による市場調査に依るところが大きかったという。ネームバリューが高かったということである。
開発にあたって、同社は京都ラーメンを「鶏ガラ醤油系」「背脂系」「豚骨醤油系」という三大系統にまとめている。当然、「新福菜館」「第一旭」「ますたに」「ほそかわ」「天下一品」などなど、主立った京都を代表するラーメンの実地リサーチも行った。
コンビニエンスストアや量販店で扱う加工商品の開発における苦労は、やはり味の再現性。寸胴からつくられたスープを目の前で注がれるラーメン店のラーメンに近づけるためには、濃縮するスープに含ませる旨味が最も難しかったという。
かくして、長時間じっくり煮込んだ豚骨・鶏ガラベースに香りの良い醤油、たっぷりのネギ、そして決め手に唐辛子を加え、麺は細麺仕立ての本格ノンフライ麺が完成した。直接味には関係ないが、パッケージにもあるとおり、テーマには「屋台の味」というものも加味された。無論、加工食品としては最大公約数的なものになるために、先の協議会の定義と完全に一致はしないが、重なる点も多い。
後の同商品に対する協議会メンバーによる寸評にもあるとおり、税込で200円という価格は高級カップ麺にしては廉価であり、完成度も高いため人気商品となった。しかしながら同商品はコンビニエンスストアでの販売であり、リニューアルを含み年間700アイテムとも言われる超激戦区のカップ麺市場においては、商品の入れかわりが自然と激しくなる。同商品は発売以来、数度に及びその市場に食い込むことに成功したが、残念ながら時期的に今号の発刊期にはほぼ欠品状態であると予想される。今回の紹介による反響如何では、コンビニエンスストア以外への流通も検討されるというから、楽しみに待ちたい。