京の夏の妖怪 その一
新たな妖怪伝承が始まる
『現代版 京都妖怪葉書(企画/株式会社ユニクリエイツ)』が売り出されている。
そして、2008年8月1日から31日までの一ヶ月間、河原町商店街の三条四条間に、この妖怪達がアーケード装飾に姿を表している。画はだるま商店ユニットの手による。
是非、天井を見上げて河原町を歩いて貰いたい。同じ歩くなら夜が良い。何故なら、妖怪達が灯りに照らされ浮かび上がり、そのユニークに創作された妖怪達の初見には相応しいと思うからだ。
迎え火が近づき、お盆にお帰りになる御先祖様も、見慣れた地獄絵はそこそこに寄り道され、50枚の葉書絵図にさぞ驚き、感心されるだろう。
この京都妖怪は、現代の都市空間京都への風刺が入り、ウイットに富んだメッセージとともに、京に縁のある妖怪として創り出されたものである。
思わす噴出してしまい、首をタテに振ってしまった。
「まだまだ京都は捨てたものやおへん。こんなパワーが欲しかったんや」と、きっと京都の先祖様達は言うに違いない。まさに、温故知新、伝統と創生を具体的に表した良い例である。ルーツと根拠は押さえた上で、今ある現象をフラッシュアイデアで形にするクリエィティブワークをされていると、小生も賞賛したい。
京都にある古来よりの世界観が、今も生きている。
水木しげる氏の「妖怪道五十三次」に迫る大作に、是非挑戦して貰いたい。
ところで、京の妖怪には、「日本人の心のふるさと」としての、一端が窺い知れる。
その伝承には不思議な力を持つ「三十六禽(きん)」の動物達があった。「三十六禽」とは人間を混乱させる魔物で、動物の精霊であり、時刻によって出現する動物霊として各々決まっている。「もののけ」とも呼ばれ、幼少の頃、それらを小生も恐れていた。
因みに、祇園祭の長刀鉾は動物満載の飾りも物で知られているが、その四方の額縁には「三十六禽」が描かれている。
また、お伽草子にあるような昔話で、ものの道理を教えられていた記憶が残っている。
今でも、「そんなんしたら、○○さんが来るえ。」と、祖母の嗜(たしな)める声が聞こえてくる時がある。
猛暑の夜咄になるかどうかは疑問だが、頭に浮かぶもののいくつかを順次紹介してみたい。
まず、物を粗末に扱い、すぐ捨ててしまっていると、捨てられた道具類の魂が妖怪になって仕返しに来ると言う話である。
作られて百年経った道具には魂(付喪神)が宿っていて、人の心を惑わすといわれる。
洛中洛外の家々から捨てられた古道具が一同に会して物騒な話し合いをもった。
「われわれは長年家々の家具となって、一生懸命ご奉公してきたというのに、恩賞がないどころか、道ばたに捨てられて牛や馬に蹴られなくてはならないとは、何と恨めしいことではないか。こうなったら仕返しをしてやろう。」
そして節分が来て、造化の神は捨てられた道具達を妖物に変化させた。妖怪となった道具達は、船岡山を住処とし、その奥に社殿を建て、変化大明神(へんげだいみょうじん)を祀り、朝夕神事を行っていた一方、都へ出ては捨てられた恨みをはらし、人はもとより牛や馬までも食い始めたという。人々は恐れ悲しんだが、退治しようもなかった。
後に、混乱の都に護法童子が現れ、妖怪を退治し、妖怪達に、もう決して人間を困らせたりしないと固く約束させ、妖怪達は仏門に入り、奥山で個々に修行し、成仏するという話しである。
道具の妖怪達ですら成仏できるわけだから、人なら尚更のことと聞き入らせられる説話である。
さて、今年8月23日・24日の二日間、東映太秦映画村芝居小屋中村座で「第十三回 世界妖怪会議」が開催される。
昨年6月、百鬼夜行の通り道である一条通は「大将軍商店街振興組合」のスタッフが、ロシアで開かれた「世界遺産都市機構会議」で、妖怪をテーマにポスター発表を行ったが、どうやら近頃、妖怪文化が動き出しているように感じる。
そして、今宵8月5日の夜、大映通り商店街三吉稲荷ではローソクが灯され、「大映通り夏祭り 百鬼夜行」が行われた。商店街を行進する妖怪仮装行列に幼少の頃を思い出した。
新たな妖怪伝承が始まる予感がする。
現代版 京都妖怪葉書
http://www.unicreates.jp/contents/youkai/
大映通り商店街
http://kinemastreet.com/
映画村妖怪まつり大祭/世界妖怪会議
http://www.eigamura30.com/event/special/radio_talk.html
ヤマイヌ 陰陽道の狼 (すずかハイキング)
http://www6.ocn.ne.jp/~kanpanda/onmyodo.html
お伽草子 (京都大学)
http://edb.kulib.kyoto-u.ac.jp/exhibit/otogi/cover/index.html