都見物のもてなし
京都観光で、どんな光を観せ、観ることができるだろうか
鳴り物入りで紹介されていた新幹線N700系のぞみ号に、指名初乗車した。
快適性が増したことに間違いない。全席禁煙車両で、通路を歩いていても嫌悪感を抱くあの臭いを嗅がせられることがない。モバイル機器のバッテリー切れを気にしなくても交流100ボルトのコンセントが足元に装備されている。窓側頭上には小さなエアーコンダクトがあり、風向き、ON-OFFまでも調整ができる。
大型液晶情報ボードも読み易いし、足元ヒーターや読書灯とハード面は充実してきた。
しかしながら、ソフト面はまだまだ発展途上である。
エアコンダクトをOFFにしても車両は寒くて仕様がない。喫煙ブースは狭く、通路には順番を待つ喫煙者で混み合っている。防音遮音効果が未だ低く電話の声が聞きづらい。乗務員が一度ゴミ集めにまわってくれたのは嬉しかった。だが、ユニホームほどには整ってはいないというか、プロとしての接客業務が板についてない。
少々辛目にはなったが、「そうだ 京都いこう」と、この秋乗車される方の身になってみた。
「しつらえ」だけに終わることなく、「ふるまい」「もてなし」の美にも精進いただきたいという一乗客のリクエストとして受け止めて貰えれば幸甚である。
これは、「環境にも乗客にも優しいNEW新幹線」を謳うJRさんだけのことではない。京都人として、更に日頃より心しなければならないことである。
もてなしの心は、接客マナーの基本であることは言うまでもないが、「迎えられるものにとっての心地良さ」があったかどうかで正否を分ける。
それゆえに難解である。自分が良いと思って行った所作も、マニュアル通り忠実に行ったことも、必ず正解とはならないのである。
行き届かなくては駄目、行過ぎても駄目である。
お客様の立場で考えることが肝要なわけであるから、迎える人がどういう人なのかが見抜けなくては、的確な対応にならないのである。
笑顔、あいさつ、お辞儀、ことば使い、身のこなしなどの基本マナーは、いくらでも研修や教本があるので、繰り返し習慣化することで身につけられる。
何故そうするのかの原理を思い浮かべて、真からの感謝が乗っかっていると、申し分なく好感度は高くなる。また、お客様に応じた自分らしい形が出来てくる。
尋ねられれば、応えられる知識も学習で向上するが、見識となると俄仕立てのまる覚えでは間に合わないのだ。何事も奥深く知りたいという貪欲さが必要だし、自らの哲学と他の思想にも関心がないと生まれてこない。
自ずから戦後の教育事情では望んではならないことなのかもしれないが、京都の伝統を守っている料亭や老舗を訪ねると、自然と教えられる。その自信と誇りと腰の低さには頭が下がる思いである。
今秋は是非に京都に出向き、もてなしの心を体感していただきたい。
秋の京都観光で何を楽しむかは、色々と発刊されている京都本が頼りになるが、「観光」の真髄に触れたほどのものがない。薄っぺらな観光を紹介するものだから、「観光」とは安っぽいものだというイメージを作り上げてしまい、名所旧跡を訪れることは通でなく格好悪いというきらいまで生んでいる。誠におかしな現象である。
「観光」とは、「観國之光。利用賓于王。(國の光を観るは、もって王に賓たるに用うるに利ろし)」(四書五経/易経)が語源てある。
つまり、「来賓賢徳の人をもてなすには,王が国の光を観せることが最良のもてなしである」との意味である。
日本の文献では、幕末にオランダ国王から贈られた蒸気船の軍艦を永井尚志(後の京都町奉行)が「観光丸」と命名したことに始まる。
その後、米欧視察から帰国した岩倉具視が,その「米欧回覧実記(久米邦武著)」の巻頭に「観光」と揮毫して以来、一般的に使われだした熟語である。
このように「観光」という文字には,「光を観せる」「光を観る」というところに,その真髄が込められているのである。Sightseenの英訳では物足りない訳だ。
秋の京都観光で、どんな光を観せ、観ることができるだろうか。
その辺りのところまで考えた「もてなし」を身に着けたい小生にとっては、まだまだ精進が肝心である。
「京都人の京都知らず」なんて、恥知らずなことにはならぬよう心がけたい。
おもてなし診断マニュアル&ハンドブック (京ネット)
http://www.kyonet.com/shop/omotenasi/index.html
観光丸
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%A6%B3%E5%85%89%E4%B8%B8
京都の都市格を考える (京都ブランド推進連絡協議会)
http://www.kyo.or.jp/brand/handbook.html
京都もうひとつの歴史 (TV大阪)
http://www.tv-osaka.co.jp/tokubetu/anotherkyoto/contents/index3.html