上賀茂の御料理秋山で頂ける物・・・後編
ミシュランガイド一つ星の上賀茂の秋山とは・・・その3
蓋をあけると、ココア色にきめ細かいスープ状のおかゆである。「黒米」を磨り潰しているのだ。
シャリシャリするのは山芋のようで、モチモチするのは、どうやら生麩のようである。
蓬の香りがする。
京料理にはない感覚で、古の南米穀倉地帯に来たような感覚であった。
大地の恵を彷彿と、食感と香りで伝えている。
青竹に薄と葛花が生けあがったようである。
カウンターに運び置かれた。実に圧巻である。
珍味の和え物の小鉢三種が置かれている。どうすればよいのか。
おもむろに小鉢を手前の盆に取り置く。
視覚の贅を味わうことを言葉なしに教えているとは、このことであろう。
炭火で焼かれているのは「鷹が峰とうがらし」で、藁焼きでスモークされた鯖がまな板にのせられた。
室内はしばらく煙が立ち込め、懐かしい匂いが漂う中、カウンターに次の一皿が。
秋山の実家は米屋で、母親が栽培した玉葱を使って、フレンチスープ仕立ての皿を用意したという。
スモークされた明石の蛸を串刺しに辛子が乗せられている。優しい甘さを持っていた。
ミシュラン三ツ星の嵐山吉兆で料理人をしていた秋山が、
お客と話しをしながら料理をしたいと思い独立開業したのが「上賀茂 御料理 秋山」である。
34歳のときであった。
古民家を利用して、心憎い演出の改装を施している。それにも、料理の演出と同様に温故知新の心根がうかがえる。
さて、次は何なんだろうか、茄子に包丁がいれられている。
ミシュランガイド一つ星の上賀茂の秋山とは・・・完
炭火こん炉にのせられた鉄鍋で頂く。
地鶏は先に焦げ目を着けていたものである。
地鶏玉子につけていただいていると、
残りの玉子を適当に鍋に入れるよう勧められる。
玉子とじにして食べてもらいたいようである。
土鍋の炊きたてご飯がすすむ。
旨い。
お替りをした。
胡桃を練りこんだほう葉味噌をだしてくれた。ご飯にのせてご満悦である。
無垢なまでの白い色に艶。銀シャリと呼べる米質だった。
更にお替りはおこげご飯である。
これがスペシャルランチの全メニューである。
特別に夜メニューと昼メニューの中間をいくような具合で組んでくれていた。
一皿ごとのポーションは少なめだが、溢れる品数が嬉しい。
おっと。
菓子が作られているではないか。
場所が移され炉辺の待合へ案内された。
葛饅頭である。
表千家のお手前で、主が亭主となって点ててくれる。
ここで3時間のランチはフィニッシュである。
心のこもったもてなしを、郷愁を覚える設えの中で受け、
損をさせてはいないかと思うほどに利巧に、美食にありつけた。
気さくな主秋山との会話も心に残る。
いい時間を過ごした至福感に満たされ、秋山の見送りを受けた。
上賀茂 御料理 秋山
京都市北区上賀茂岡本町58
京都市営地下鉄「北山」駅 徒歩15分
075-711-5136
・営業時間:昼12:00~14:00 夜18:00~20:00
・定休日:水曜、月末の木曜