二十五菩薩お練り供養法会を訪ねて
菩薩が現世に降りてきて、衆生を安楽浄土へ導く姿を具象化したものだと聞く。
本堂を浄土とし、地蔵堂を現世に見立て、金襴の菩薩装束をつけた25名の児童を含め総勢200名に及ぶ人々が、境内に設けられた高さ2mの来迎橋をゆっくりと渡るのである。
見たままに写真を綴ると・・・
これが極楽の景色なのか。
菩薩様が民衆を極楽浄土へ導く様子を表しているという「二十五菩薩お練り供養大法会」が東山区の泉涌寺塔頭の即成院で営まれていた。
山門を潜ると、高々とあがる扇が目に入る。「願いが的に」当たるという那須与一の扇であろうか。
那須与一は屋島の合戦以前に、道中で病にかかり突然倒れ、京都伏見で療養し、即成院の本尊・阿弥陀如来の霊験にすがり、病気回復と戦いにおける戦功を強く願い続けた。与一の祈りは通じ、屋島の戦いに挑むことが出来た。
即成院には、その那須与一の墓碑がある。
浄土教では、臨終の際、阿弥陀如来が二十五菩薩とともに迎えにきて、極楽浄土に導いてくれると教えている。「二十五菩薩お練供養」は、この阿弥陀如来が現世へ来迎する様子を、実際に仮装して演じ、行列を作り、境内に設けられた大きな来迎橋を練り歩くという行事である。
お練りは江戸時代中期に始まったと伝わり、本堂を極楽浄土、地蔵堂を現世に見立て、その間に架けられた高さ約2メートル、長さ約50メートルの板橋を行列する。
板橋に結ばれた五色の布を固く握り、引接されることを願う信者はお練りを見上げ、合掌する姿も見られた。
近年、稚児や菩薩の出仕者が一般募集されるようになった。
幼き頃より、現世利益を受けるべく菩薩との結縁を結ばれる人には、願ってもないことかも知れない。
金襴の菩薩装束や介添え人の黒留袖、色留袖姿は勿論、稚児衣装、僧侶の袈裟姿、修験者の山伏姿、いずれも秋の青空に映え、さすが京都と唸らせるものであった。
本堂を極楽浄土、境内の地蔵堂を現世に見立てて、その間に、高さ二メートル、長さ五〇メートルの橋が掛けられている。その上を、阿弥陀如来の化身である大地蔵菩薩を先頭に二十五菩薩が、おごそかな来迎和讃に合わせて、本堂から地蔵堂へ、地蔵堂から本堂へ練り歩く。
先頭に立つ大地蔵菩薩の菩薩出仕者は、知人のMさんであろう。
しかし、流石にこの場ではお声掛けできなかった。
大地蔵菩薩を先頭に、そのあと続く菩薩は・・・
1.観世音菩薩
観世音菩薩は阿弥陀如来の脇侍で、
世の人々の願いを自由自在に観じて救済する菩薩。
姿は色々あるが、
二十五菩薩のときは蓮台の器を持っている。
2.大勢至菩薩
大勢至菩薩は観世音菩薩と同じく阿弥陀如来の脇侍で、人々の無知を救う仏の智慧を象徴した菩薩。持ち物はなく合掌のみである。
普賢菩薩は文殊菩薩と兄弟で、智慧の文殊、定行の普賢といい、釈迦如来の脇侍として有名な菩薩。幡蓋=柄のついた天蓋を持っている。
4.薬王菩薩
薬王菩薩は薬をもって人々の身心両面の治す仏様である。元は星宿光という名の長者で、電光明長者という弟がいる。
後に星宿光は薬王菩薩に、弟は薬上菩薩(やくじょうぼさつ)になる。そして将来は浄眼如来、浄蔵如来におのおのなると言われている。
また薬王菩薩は、一切衆生喜見菩薩の生まれ変わりで、薬師如来の八大菩薩の一人であり、阿弥陀様の二十五菩薩の一つでもある。
幢幡(どうばん)を持っていることで薬王菩薩とわかる。
5.薬上菩薩
薬王菩薩と薬上菩薩は兄弟で、ともに良薬で病に苦しむ人々を救う。
玉幡(ぎょくばん)を手にしているので薬上菩薩 。
6.法自在王(文殊菩薩)
法自在王菩薩は別名文殊菩薩と呼び、釈迦如来の脇侍で智慧の菩薩。
曼殊師利菩薩(まんじゅしりぼさつ)とも、妙徳菩薩などともいう。
持ち物は華鬟(けまん)である。
獅子吼菩薩は、獅子が吼えるように悟りについて説法する菩薩。
お持ちになっている楽器は何だろうか。
8.陀羅尼菩薩
陀羅尼菩薩は、仏教で用いる呪文、言葉の力で仏法を保持して悪法を防ぐ。
陀羅尼はサンスクリット語の音写で、訳すと総持となるので、総持菩薩ともいう。
舞いながら両手とも袖を持っているのが特徴である。
9.虚空菩薩
虚空菩薩は、智慧と慈悲が虚空のように広大無辺であるという。
台に乗っている鼓を打っている。
願いに応じ蔵を開いて、その宝を与えてくれる。
横笛を吹いている。
このあと、更に各々の楽器などを携えた十五の菩薩が続く。
この調子で続けるには紙幅が足りないばかりか、菩薩様の分別もつかなくなってきた。
仏像図彙(ぶつぞうずい)に図示され二十五菩薩には・・・
1観世音菩薩 2薬王菩薩3大勢至菩薩4薬上菩薩5普賢菩薩6陀羅尼菩薩7法自在王菩薩8白象王菩薩9虚空蔵菩薩10徳蔵菩薩11宝蔵菩薩 12金蔵菩薩13光明王菩薩 14山海恵菩薩 15金剛蔵菩薩 16華厳菩薩 17日照王菩薩 18衆宝王菩薩 19月光王菩薩 20三昧菩薩 21獅子吼菩薩
22大威徳菩薩 23定自在王菩薩 24大自在王菩薩 25無辺身菩薩
とあったが、二十五菩薩和讃に示されたものとは少し異なるようだ。
これだけ菩薩様がいらっしゃるとは、凡夫の小生、菩薩様に忙殺されてしまいそうである。
■開催日時:2013/10/20 13:00~
■開催場所:泉涌寺塔頭 即成院
京都市東山区泉涌寺山内町28
■料 金:入場無料
■お問合せ:075-561-3443
■URL :http://www.negaigamatoe.com/