担ぎ、昼網、遠藤家
遠藤家の目利き遺伝子、その真価は料理でご確認を
父が担ぎ、長男が昼網担当というお魚一家がある。網元から文字どおり魚を担いで店に卸すのが「担ぎ」、明石の新浜漁港から直接卸されてくるのが「昼網」、と、ここでは簡単に説明しておこう。いずれにせよ、鮮度と目利きがモノを言う世界で、特別なルートを使う職業であり、この父子が卸す魚は、京都においてひとつのブランドとして語らる。もちろん、「担ぎ・昼網であらねば、魚にあらず」なんてことはないが、錚々たる京の名店を得意筋に持つ「遠藤」の名前が、京都に燦然と輝いていることは間違いない。
遠藤博之さんが自らの看板で魚を卸して17年。それ以前は姫路の宮助さんという伝説の担ぎの元で、魚屋に卸す仕事をしていた。京都から明石まで毎日通う、真性の担ぎだった。現在はかつての担ぎ仲間から仕入れをする、言わば「中継担ぎ」だが、その名は京都随一の存在と言っていい。数年前からは長男の一平さんと二人三脚で営んでいる。
博之さんは言う。「資格が要るわけでもないので、私らがやらんでもえぇんですよ。どんどん料理屋さんが直接仕入れに行かはったらえぇんです(笑)」。その言葉は、嫌味でも傲慢でもない。実際、「遠藤商店」という屋号はあるが、看板一つ揚がっているわけではないのだ。
魚を扱う店の紹介で、ときどき見かける「担ぎ」「昼網」の文字。
それは言ってみれば、魚卸のプロフェッショナル。
京都にその名あり。遠藤さん家の一日を追ってみた。
AM6:30
明石からやってくる一番の仕事仲間、水口さんの円山の生け簀で合流。送られてきた魚を確認して、軽トラに荷積み。ここに来るまでに、AM1:00頃起床してFAXのやりとりやら、処務をこなしている
AM7:30
円山から移動。次は泉佐野から穴子を運んでくれる鎌野さんと合流。この間、並行して一平さんは中央卸売市場で仕入れ中
AM8:00
遠藤商店にて、一平さんとふたりで仕入れた魚を確認。不足分は再度円山や市場に行って確保し、各店用に仕分けする。一部、さばいて持って行くものも。東山区に店を構えたのは一年ほど前。それまでは、仕入れ先や納品先でまな板を借りてさばいていたとか
AM9:00
飲食店各店に納品。この日は休みの店が多く、15~16軒を回る。ある程度注文は受けるが、水揚げは正に水もの。注文以外の魚を入れて店に届けることもある。曰く「押し売りです(笑)」。もちろん、その魚が突き返されることなどめったになく、最初から「二品おまかせ」なんていう注文もある